俳優で演出家の鼓太郎(50)が率いるシアターバイキングの舞台「DONZOKO」が27日から8月1日まで東京・大塚「萬劇場」で上演される。5月の予定が緊急事態宣言で延期されていた。コロナ禍での演劇にかける思いを聞いてみた。

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「DONZOKO」は2017年(平29)年11月に亡くなった演出家・和希太平氏(享年70)がロシアの戯曲家マクシム・ゴーリキーの戯曲「どん底」から着想を得て脚本化。今回、鼓太郎が脚色、演出に挑む。

「どん底」は黒沢明監督でも映画化されている。

「僕自身は和希さんの演出で、主役の辰三と男爵という役を演じさせて頂きました。和希さんが他界して3年、自ら和希作品をやってみようと決意しました」

物語の舞台となる時代は、第2次世界大戦直後の1947年(昭22)。仕事もせず、夢や希望を失って木賃宿(安宿)でたむろしている人たちの姿を描く。江上真悟、鈴木寿永吉、高杉美羽、タッド桜井、釣舟大夢、市瀬瑠夏、高沢ふうこ、江口信、河原田ヤスケ、神太郎らが出演する。

 

「この作品はコロナ禍の去年や今年の状況と似ているところがある。敗戦直後の身動きの取れなかった人々が、傷痍(しょうい)軍人のまねをしてお金を稼いでいる者がいたり、アメリカのタバコを買って闇屋で売ったり…。困難な状況でもたくましく生きようとする、人間味あふれる作品。現在、日本もコロナ禍で不自由な生活が強いられているが、同じく終戦後の大変な時代にも人々は必死に生きていた。そんな状況下の中、人間にとって本当に大切なものは何か」

5月の公演の中止を決めたのは、本番の1週間前だった。

「本格的にセットを組んでの4月25日に通し稽古。しかし翌日から緊急事態宣言下となり、中止にせざるを得なくなりました。無観客で上演するという選択肢もありましたが、それは本来の演劇の姿ではないと思った次第です。そしてまた今回も緊急事態宣言。風前のともしびの演劇業界ですが、徹底的な感染対策を取って上演いたします」

コロナ禍での苦渋の演劇活動。昨年2月には「サゼン幕」をプロデュース。11月には「光と海と-光秀と五右衛門-」を演出した。

「民間の劇場には行政や公的機関からの保証はありません。皆このコロナ禍で経営難となっています。演劇は映画と同じく、上演中に客席で会話をするということはない。お客様に感染対策をしていただき、出演者も万全な状態であれば、リスクが少なく上演していくことができる。文化・芸術の灯を絶やさないために、みんな頑張っている。ぜひ劇場まで足を運んでください」

コロナ禍でも演劇にかける熱い思いがくじけることはない。(続く)

 

◆鼓太郎(こたろう)1970年(昭45)10月6日、東京都北区生まれ。太田プロダクション所属。16歳の時に史上最年少で和太鼓の日本チャンピオンになる。88年にストリートパフォーマンスユニット「幕末塾」のメンバーとなり、フジテレビ系「ナイスガイ・コンテスト」で準グランプリ受賞。89年に秋元康プロデュース「Come on Let's Dance」でCDデビュー。俳優としては90年のTBS系「びんた」など数多くのテレビドラマに出演。最近ではNHK大河ドラマ「青天を衝け」、テレビ東京系「警視庁ゼロ係」、フジテレビ系「スカッとジャパン」(7月12日午後7時)がある。94年に「免許がない!」で映画デビュー。俳優の傍ら、シアターバイキングを主宰し、舞台のプロデュース・演出を行っている。特技は和太鼓、武道。趣味はマリンスポーツ。176センチ、65キロ、血液型AB。