フランスで開催中のカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(42)の映画「ドライブ・マイ・カー」(8月20日公開)の公式会見が12日、行われた。

濱口監督は「国際映画祭が自分を発見してくれたし、育ててくれたという印象を強く持っている。映画祭が自分に対して、求めてくることがあればお返ししていきたいと思う」と各国の映画祭に感謝した。

濱口監督は東大入学後に映画研究会に入り、文学部では美学美術専攻で映画論を学んだ。卒業後、映画やテレビの助監督や製作会社のADを経て、1浪の末、2006年(平18)に東京藝術大大学院映像研究科に2期生として入学し、黒沢清監督(65)に師事した。修了制作展で発表した08年「PASSION」がサン・セバスチャン映画祭(スペイン)で高く評価され、15年の「ハッピーアワー」がロカルノ、ナント、シンガポールをはじめ、数々の国際映画祭で主要賞を受賞した。

商業映画デビュー作となった18年「寝ても覚めても」が、初めてカンヌ映画祭コンペティション部門に出品されると、20年にベネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢監督の「スパイの妻」では、大学院の後輩の野原位氏とともに企画と脚本を担当し、師匠である同監督に企画を持ち掛けた。今年2月のベルリン映画祭では、オムニバス映画「偶然と想像」で審査員大賞(銀熊賞)を受賞し、カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界3大映画祭を席巻している。

濱口監督は「国際映画祭というものは、インディペンデントという形で映画作りを始めて続けてきた身にとっては、よりどころ」と語った。その上で「自分が面白いと思ったものを作って、それが商業的に、なかなか流通していかないという苦い思いを初期の段階では味わっているが、映画を作るたびに、国際映画祭の方がより多くの人に見せるべきものだと言ってくれることは、ものすごく励みになった。それによって劇場公開が可能になった作品もある」とも語った。