フランスで開催中のカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(42)の映画「ドライブ・マイ・カー」(8月20日公開)の公式会見が12日、行われた。

劇中で渡利みさきを演じた三浦透子(24)と、主演の西島秀俊(50)が演じた家福(かふく)悠介の妻音を演じた霧島れいか(48)は、同監督独特の演出法“本読み”について各国のメディアを前に熱く語った。

“本読み”は、感情を入れずに脚本を何度も何度も繰り返し、セリフが自動的に出てくるくらい、俳優の体に染み込ませる手法だ。霧島は「撮影に入る前に本読みとかリハーサルを重ねました。その本読みというのも、私が今までやったことない“感情を入れない”という方法だったので、これをしていてどういうことが起きるのかというのが、初めの頃は自分では理解するのが難しく、ただただ読んでいるだけという作業でした」と振り返った。

その上で「その中で、だんだんと分かってきたことがあって。普段撮影に入る時、何かを“しよう”としてしまうんですね。何かしようしようという気持ちが先に出てしまうことがあるというか、演技をしてしまうというか。それが感情を入れない本読みを重ねていく中で、だんだんそれがフラットに、自然の流れに持っていけるというか、何か自分の中にとても静かな何かが流れ始めるのを感じました」と効果を語った。

三浦は「お芝居をするにあたって、心の状態を作ることによって体がついてくることもあれば、反対に体に引っ張られて心がついてくることもある。特に今回は、心が体の状態、とりわけ声についてくるということを感じました。監督もおっしゃっていたように本読みを中心に音・声にこだわっていて『相手の心を動かす声をつくる』ということに時間を使わせてもらっていたので、そういった声を自分でも聞いているうちに、自分自身の心も動いてくるのだと」と語った。

その上で、歌手としての自信の活動を踏まえ「そういった経験は歌手としての活動の中で経験したことではあるけれど、お芝居で感じたのは今回、濱口監督の演出を受けて初めて感じた発見でした」と語った。

「ドライブ・マイ・カー」は、作家・村上春樹氏(72)が13年11月発売の「文芸春秋」12月号に発表した短編で、同誌14年3月号まで連続で掲載した「女のいない男たち」と題した連作の第1弾で、14年の短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)に収められた短編小説の映画化作品。舞台俳優で演出家の家福が満ち足りた日々を送る中、脚本家の妻・音が、ある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう。2年後、喪失感を抱えたまま生きる家福は、演劇祭で演出を任されることになり愛車で向かった広島で、寡黙な専属ドライバーみさきと出会い、ともに過ごす中で、それまで目を背けていたあることに気づかされていく物語。