壇上で大竹しのぶ(63)が語る言葉を聞いて、元夫・明石家さんま(65)を、お笑い芸人として、リスペクトしているのだと感じた。

さんまが企画・プロデュースし、大竹が声優として主演したアニメ映画「漁港の肉子ちゃん」(渡辺歩監督)トークイベントが7日、都内で行われた。この日、さんまは登壇せず、大竹と吉岡里帆(28)2人での舞台あいさつだった。大竹は登壇早々「今日はプロデューサーの人がいないので、きちんと、ゆっくりお話が出来ると思います」と、さんま不在の状況を“つかみ”にした。「さすが、さんまさんの元妻…」。内心、そんなことを思いながらシャッターを切っていた。

吉岡が、アフレコのほぼ全てに立ち会ったという、さんまとのエピソードを聞かれ「(さんまが)すごい、たっくさんお話ししてくださって」と言えば、大竹は、すかさず「全く印象に残らない。ひと言も覚えていない…ただ、しゃべっていたということだけ覚えている」と笑いながら突っ込んだ。吉岡が「面白かったのが、私はアフレコブースにいて、さんまさんがミキサーの所にいらっしゃって(アフレコ部屋に)マイクが通ってないのに、何か、すごいいっぱいしゃべってくださる。何ておっしゃってるんだろう? マイクが通らなくてもしゃべる、さんまさん」と言えば、大竹は「(さんまが)うるさいということですよね」と笑いながら返した。

大竹にも、さんまとのアフレコ時のエピソードについて質問が飛んだが、こう語った。

「私の場合は、渡辺監督がいらして、そのすきまに(さんまから)『ここでひと言、言えないか?』とかアドリブの要求が多くて、どこかで笑いを入れたいという欲求がすごい。画が出来上がっているんだから、監督が『う~ん…ここは、ちょっと無理です』と困っていた。(さんまが)『オフでひと言』とか『ここで息とか』(言ってきたのを受けて)『ハァ』とか『ニィ』とか、いろいろ言っています」

そんな感じで、さんまを散々、いじってネタにした大竹だが、オファーを受けた経緯を語る中で、さんまへの気遣いをのぞかせた。

「(製作の)吉本興業の方から『プロデューサーのさんまさんが、ぜひに、大竹さんじゃないと』と言って…そうすると、すごく断りにくいなと思って。貸し借りじゃないんですけど、私のCDのレコーディングで(さんまが)歌ったというか、しゃべったのがあって。『はい、やります』と言ったら本人(さんま)は全然、そう(出て欲しいとは)言っていなくて、吉本の人が私をだましたんですけど…でも出られて本当に良かった」

大竹は17年11月22日にアルバム「ち・ち・ち」をリリースし、その中に収録された「キライナヒト」で、さんまがセリフ部分を担当しており、そのことを指したとみられる。

その上で、大竹は、さんまがこの映画を作った理由はどこにあるかと聞かれると、こう答えた。

「昔から、温かいものが好きで、人を笑わせること…多分、ここにいたら、本当に隅っこの笑っていない人を見つけて『何で笑っていないんだ』って言うような人なので。本当に人を幸せにすることが、一瞬でもいいから…そういうのが昔から好きで。だから、そういうものを作りたいんだと思ったと思うんですよね…いいふうに言えば、ですけど」

折しも、さんまの芸人としての発言、足跡をまとめた、20年11月刊行の「明石家さんまヒストリー1 1955~1981『明石家さんま』の誕生」を読んでいた。その“さんま研究書”につづられた、さんまの人柄や言動と、大竹の壇上での発言は通じるものがあった。大竹の話を聞いているうちに、6月28日に刊行された「明石家さんまヒストリー2 1982~1985生きてるだけで丸もうけ」も、読んでみたくなった。【村上幸将】