女優上久保慶子が、9月8日に初日を迎える舞台「沙也可~海峡を越えた愛~」(東京・渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール、12日まで)に出演する。

劇作家倉科遼氏(71)が製作総指揮・原作・脚本を担当。400年以上前、豊臣秀吉の朝鮮出兵に従軍した雑賀孫六(田村幸士)が離脱して、現地の娘・金美姫(夕貴まお)と結ばれ、朝鮮人・沙也可となって戦う愛の物語。上久保は、35歳の韓国女性・姜恩珠(カン・ウンジュ)を演じる。

上久保は「雑賀孫六は豊臣秀吉軍の兵として朝鮮に行って、こんなにひどい戦いで韓国の人たちを殺したくないとなったんです。最終的に日本の軍を離脱して朝鮮人になって、夕貴まおさんが演じるヒロインの金美姫と恋に落ちるんです。この舞台は、もちろん戦いも描きますが、ラブストーリーでもあるんです」と説明する。

上久保が演じる姜恩珠は、日本の兵たちに反発する。「すごく気の強い朝鮮の女性。日本人に自分の親戚、身内が殺されているんですよ。親も元々、亡くなっていて1人ぼっち。そんなわけで、日本軍を本当に恨んでいる。周りが打ち解けていく中で、沙也可たちを受け入れていくことがなかなかできないんです。それがだんだんと変わっていくのも、物語の見どころだと思います」。

昨年10月に上演された舞台の再演。1300年前に朝鮮半島の高句麗から日本にやってきて、716年(霊亀2)に武蔵の国に移り住んだ高麗若光にちなんで、在日韓国人が結成した「高麗若光の会」の朴仁作会長と朴清博副会長、沙也可12代目子孫の金昌先副会長の強い思いが、今回の再演に結びついた。

「昨年10月の公演を見に来てくれていて、なんとしても他の在日の仲間たちにこの舞台を見せたいから再演して欲しいということで応援してくれています。私は今回からの出演なんですが、よりいい舞台を見せるために頑張っています」。

コロナ禍での稽古は、感染対策のために細かいスケジュールを組んだ。

「同じ役を公演ごとに2人で交代で演じるダブルキャストが3組あるんですが、それも別々に稽古。部屋を細かく分けて待機して、村の人々の芝居、合戦シーンの芝居と、自分の稽古時間の何時から何時までしか滞在できませんよとやってきました。通し稽古の時に、そのそれぞれのシーンを合わせて見て、やっと流れを理解できたみたいなところもあります」と話している。

(続く)

◆「沙也可~海峡を越えた愛~」 400年以上前に実在した人物がモデル。戦国時代、豊臣秀吉は、東アジアの覇権を握るために30万人の兵隊を朝鮮半島に送り込んだ。

秀吉の2度にわたる朝鮮出兵「文禄の役」と「慶長の役」に、秀吉に滅ぼされた雑賀一族の再興を図るため、紀州雑賀衆の頭領の雑賀孫六は鉄砲衆を率いて従軍した。

しかし、大義のない戦に疑問を抱き日本軍を離脱する。雑賀一族は朝鮮軍に加わり、鉄砲の技術を伝え秀吉軍との戦いに大きく貢献して英雄となる。

日本人の孫六が、朝鮮人の沙也可となり、1人の朝鮮人女性(金美姫)と愛し合う物語を中心に描く。

チケットは(https://ticket.corich.jp/apply/113108/005/)