女優上久保慶子が、8日に初日を迎える舞台「沙也可~海峡を越えた愛~」(東京・渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール、12日まで)に出演する。

劇作家倉科遼氏(71)が製作総指揮・原作・脚本を担当。400年以上前、豊臣秀吉の朝鮮出兵に従軍した雑賀孫六(田村幸士)が離脱して、現地の娘・金美姫(夕貴まお)と結ばれ、朝鮮人・沙也可となって戦う愛の物語。日本の兵に反発しながら、やがて思いを変えていく35歳の韓国女性・姜恩珠(カン・ウンジュ)を演じる上久保に聞いてみた。

「東京・練馬の豊島園のそばで生まれ育ちました。学生時代にバンドやっているうちに、遊びでライブをやろうみたいな。ボーカルでした。そうやってるうちに、ちょっと音楽をやらないかみたいな感じになって、仕事はイベントのモデルに行ったりとか。韓国の電気会社サムスンのモデルとかも。韓国のモデル業界の社長さんが『なんか上久保さんすごく韓国人っぽいから、韓国で仕事しないか』とも言われました」

バンドをやりながら、モデルの仕事をこなしていた上久保に運命的な出会いが訪れる。今につながる女優の道への誘いだった。

「モデル系の仕事とかをこなしながら、ボイストレーニングも受けていたんです。それで劇作家の平山一夫先生に個人レッスンしてもらったら『君は芝居の方が向いてる』って。二足のわらじを履いているとどっちも中途半端になる、どっちかにしなさいと、すごく怒られたんです。劇団俳小なんかがやっていたスペインのガルシア・ロルカっていう劇作家を平山先生がすごく好きで。その生涯を舞台化した「ロルカ・オリーヴの木と泉の間に」っていう作品の話を聞いていて、私も好きになっちゃって。でも、レッスンを受け始めて3カ月くらいで、平山先生が亡くなっちゃたんです。私、この後どうすればいいんだろうなと思って、すごく落ち込んじゃいました」

落ち込んでいた上久保を救ったのが、女友達だった。「慶ちゃん、スペイン旅行に行こうよ」という言葉をかけられた。

「女2人でパックとかも組まずにスペインに出掛けたんです。それが海外旅行デビューで、最初は少し戸惑ったんですがセビリア、グラナダ、バルセロナ行って、フラメンコとかも見て。最後はフランスのニースから、イタリアのベネチアまで行ってマルコポーロ空港から帰ってきました」

(続く)

◆「沙也可~海峡を越えた愛~」 400年以上前に実在した人物がモデル。戦国時代、日本全国統一を成し遂げた豊臣秀吉は、東アジアの覇権を握るために30万人の兵隊を朝鮮半島に送り込んだ。

秀吉の2度にわたる朝鮮出兵「文禄の役」と「慶長の役」に、秀吉に滅ぼされた雑賀一族の再興を図るため、紀州雑賀衆の頭領の雑賀孫六(田村幸士)は鉄砲衆を率いて従軍した。しかし大義のない戦に疑問を抱き日本軍を離脱する。雑賀一族は朝鮮軍に加わり、鉄砲の技術を伝え秀吉軍との戦いに大きく貢献して英雄となる。

日本人の孫六が、朝鮮人の沙也可となり、1人の朝鮮人女性(金美姫=夕貴まお)と愛し合う物語を中心に描く。

チケットは(https://ticket.corich.jp/apply/113108/005/)