中村梅玉(75)が14日、都内で、国立劇場10月歌舞伎公演(同2~26日)の「通し狂言 伊勢音頭恋寝刃」の取材会を行った。妖刀をめぐる悲劇やお家騒動を描いた物語。

29年前の梅玉襲名披露興行を皮切りに、主人公の福岡貢を演じるのは今回で5回目。梅玉は「思い入れ、思い出のある芝居です。一生の財産にしたい役です」と話した。

アニメやミュージカルなど、刀剣を題材にした作品も人気とあって、梅玉は「歌舞伎を見たことはないけど、刀剣に興味があるという人にも見てほしい」とPRした。

物語のクライマックスの場面「油屋」「奥庭」の上演は単独で上演されることが多いが、通し上演は、物語の発端や展開がよく分かるようになっている。

中村時蔵、中村又五郎は、後輩たちが通しを経験することの大切さを語った。時蔵は「普段やらないところを見たり、やったりすることで、深みを学んでもらいたい」、又五郎も「通し狂言を古い映像で見るのは簡単だが、生の舞台に参加して感じることが必要」と話した。

感染対策で、大向こうの掛け声がない状態が長く続いている。

梅玉は「歌舞伎は微妙な間(ま)がポイント。大向こうが声を掛け拍手が起きる一瞬の間がない。今は芝居がスピーディーで、微妙な間をこしらえることができない。本物の歌舞伎の間を後輩たちが守っていけるよう、状況が戻ったら、意見を言っていきたい」と話した。