是枝裕和監督(59)が20日、都内で行われた2021年度国際交流基金賞授賞式に出席した。

同賞は、国際交流基金が1973年(昭48)以降、学術や芸術などのさまざまな文化活動を通じて、日本と海外の相互理解促進に顕著な貢献があった個人、団体に贈られるもの。同監督は「個人名で頂く賞は、非常に居心地が悪い。なぜかというと、いろいろな人の手助けの中で作っていますけど、好きなことを好きな人とやっている中で、たまたま海外の人とやった。国際交流のために映画を作ってきたというわけではないので、申し訳ない気がします」と笑みを浮かべた。

是枝監督は、18年に「万引き家族」が世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞。翌19年にはカトリーヌ・ドヌーブやジュリエット・ビノシュらを起用して日仏合作映画「真実」を製作。コロナ禍の現在もソン・ガンホ、カン・ドンウォンらを起用した初の韓国映画「ブローカー」の製作が佳境を迎えている。

また東京国際映画祭でも、20年から国際交流基金アジアセンターとの連動企画として、アジア各国、地域を代表する映画監督と、第一線で活躍する日本の映画人とのトークを発信する企画「アジア交流ラウンジ」を立ち上げた。そうして長年にわたり、映画を通じた国際相互理解の推進に大きく貢献したことが評価された。

スピーチの冒頭で、是枝監督は「こういうスピーチは、いきあたりばったりで話すんですが、同時通訳が入るので紙に書いてきてくださいと言われました。(映画の撮影)現場でも、自分で書いたにもかかわらず(俳優に)書いた脚本と違うせりふを言わせられないかといつも考えます」と口にして場内を笑わせた。

是枝監督は、番組制作会社テレビマンユニオンでドキュメンタリー番組のディレクターとして活躍。95年に映画監督としてデビューすると、デビュー作「幻の光」がベネチア映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。その後、カンヌ映画祭で04年に「誰も知らない」が男優賞(柳楽優弥)、13年には「そして父になる」が審査員賞を受賞するなど、海外の映画祭に多数、参加、受賞してきた。

スピーチでは、そのことを踏まえ「映画を持って海外に行った時、すごく視界が開けた。日本だけで作っているのと、明らかに違う世界が広がっていました。映画を通じて、いろいろな人と自分が繋がる…次の作品のエネルギーに繋がっていくのは、参加した映画人の多くの人が感じる実感ではないかと、映画デビュー25年たっても映画祭を大事にしたい理由の1つ」と熱っぽく語った。

その上で「日本映画って何なんだろうか、日本で映画を撮るって、どういうことかを突きつけられるのは新鮮。個人的な体験が国際交流に繋がっているかは甚だ疑問ではあるのですが、自分の経験を失敗を含めて共有頂ければ」という言葉で、スピーチを締めた。

国際交流基金賞は、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、見送られており2年ぶりとなった。21年度は是枝監督のほか笙(しょう)奏者の宮田まゆみ氏(67)ベトナムのハノイ国家大学外国語大学日本言語文化学部、ハノイ貿易大学日本語学部、ハノイ大学日本語学部が合同で、そしてドイツ・ベルリン自由大学のイルメラ・日地谷=キルシュネライト教授(73)が受賞した。受賞者には賞状と、副賞として300万円の目録が贈られた。