熱烈な阪神ファンで知られた父の名跡を継ぎ、虎党としても“遺志”を引き継いだ落語家、当代の桂春蝶(46)が27日、前日のヤクルト優勝に「もうこれで一喜一憂せんでええ。正直ホッとした」と、あふれるタイガース愛を発揮した。

この日は、神戸新開地・喜楽館で、プロ野球応援企画として6月に開催したシリーズ続編の昼席特別企画「プロ野球応援ウィーク 答え合わせ編」(11月22~28日)発表会に出席。元巨人ファンで、プロ野球好きの笑福亭銀瓶(54)とともに野球愛を語った。

「松山千春の歌やないですけどね、応援することに疲れたみたい。嫌いになったわけじゃない…んです」

16年ぶり優勝が手の届くところにあった今季、応援する熱量も格段に違った。確かな高座、テレビでのタレント性に加えて、連日、甲子園のスタンドに通い、阪神ファンの間でも“有名なファン”だった父は、ファンからも愛された。息子も同じ道を歩んできた。

中学時代、中日ファンになろうとして「札束500万円積まれて、おやじから『ほなら、ヨソの子になってくれ』と言われた」とも吐露。結果、自らも阪神ファンを貫き、父の死後、父の師匠だった3代目桂春団治に入門した。

「やっと、おやじの気持ちが分かってきました。阪神いうんは、血がつながってんのや、と。息子がポンコツでも縁切られへんのや。おまえや! 言われましたが、その通りで…」

新型コロナウイルスに感染し、入院中も阪神戦だけを楽しみに、勝利に涙したという。無念の2位となったが、春蝶は「今年で阪神は佐藤輝のチームになった。彼が調子を落としたら失速した。来年からは良くても悪くても『4番は佐藤輝』と決まった。これが分かっただけでも、今年は大きな成果。これで、あと15年は楽しめる。メジャーに行かなんだらね」。チームの指針…いや、応援すべき軸ができた今季に感謝した。

今季は最大7ゲーム差を逆転された阪神だが、過去には13ゲーム差をひっくり返されている。春蝶は春先から「今年は優勝」と口にはしつつも「(当時監督の)岡田(彰布)さんもずっと、まだ分かれへん言うてたし、僕も“阪神半疑”やった」と振り返る。

「人間って誰しも悪いとこ、あかんとこはある。僕もそう。僕らもう(阪神に)ボヤキ倒して、自分の人生重ねてきたしね。今は、佐藤輝明という選手を育てるために、今年の優勝はなかったと思いますよ」

先日の広島戦、佐藤輝が約2カ月ぶりの一発を放った際も「鈴木誠也1歩も動けません-いうて、実況聞いただけで泣きました。今も思い出したら泣きそう」とも言い、来季以降の支えも手にした。

だが、その前に-。クライマックスシリーズ(CS)がある。CSを勝ち抜けば日本一のチャンスも残っている。春蝶は「まず、巨人には余裕で勝って、ヤクルトに4勝1敗…つまり(ビハインド1敗があり)負けない? つっこんでええですよ(笑い)」と、日本シリーズ出場を確信する。

その心は「選手たちが一番悔しい。団結しているはず。忠臣蔵ですよ。四十七士みたいな。吉良上野介は『運命』ですね。運命を敵に、乳酸菌御殿へ討ち入りですよ」と、勝手に猛虎ナインの覚悟? まで口にし、夢をふくらませた。

ちょうど、日本シリーズの期間中に、昼席特別企画「プロ野球応援ウィーク 答え合わせ編」(11月22~28日)が重なることから、春蝶は「なにかしら阪神をからめますよ。新作でももちろん、古典であってもどこかにからめます」と約束した。

春蝶は27、28日に中トリで出演。トリは27日が近鉄ファンだった笑福亭仁智、28日は熱烈阪神ファンの桂小文枝が務める。