米ニューメキシコ州で撮影中だった米映画「Rust」のセットで俳優アレック・ボールドウィン(63)が小道具の銃を誤射し、撮影監督のハリーナ・ハッチンズさんが死亡した事故で、サンタフェ地区の検察はボールドウィンの刑事訴追の可能性を排除していないことが明らかになった。

27日に記者会見したメアリー・カーマック・アルトヴィース検事は、銃を発砲したボールドウィンや弾薬の入っていない「コールド・ガン」だと言って手渡した助監督を含む関係者の訴追の可能性について問われ、「現時点では誰も排除されていない」と述べた。

また、捜査当局は現場から3丁の銃を押収し、うち2丁は小道具の機能しない銃だったが、1丁は本物だったと発表。ボールドウィンが撃ったのはこの本物の実弾入りの銃だったことも明かした。

捜査当局によると撮影現場から銃の他に弾薬およそ500発を含む600点の証拠品を押収しており、弾薬の中には空砲やダミー弾に加えて実弾もあったというが内訳は明らかにされていない。本来は実弾が撮影現場に持ち込まれることはないが、一部報道では事故の数時間前に撮影スタッフが小道具の銃と実弾を使って缶を狙って射撃練習に講じていたと報じていた。

警察の取り調べに対し、銃をボールドウィンに手渡した助監督はカートの上に置かれた3丁の銃の中から1丁を手渡す際に銃がコールドガンかどうか確認はしていなかったと供述しているという。また、銃をカートに置いたのは今回が2作品目となる新人の武器係で、銃は直前まで安全な場所に保管していたが、弾薬に関しては安全な場所に保管はしていなかったと供述しているという。現時点でなぜ実弾が装塡(そうてん)されていたのか、どのような経緯で現場に持ち込まれたのかは分かっていない。

事故当時はリハーサル中でカメラは回っていなかったというが、肩を撃たれて負傷したジョエル・ソウザ監督によると教会のシーンで椅子に座ったボールドウィンが銃を素早く抜く練習中に暴発したと述べており、同監督は亡くなったハッチンズさんの肩越しにその様子を見ていたという。捜査当局はソウザ監督の肩からハッチンズさんに当たった銃弾が摘出されたことを明かし、発射した弾は1発だったと発表した。(ロサンゼルス=千歳香奈子)