第94回アカデミー賞で、邦画で史上初の作品賞、脚色賞(共同脚本の大江崇允氏も)監督賞、国際長編映画賞の計4部門にノミネートされた、「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督(43)が9日、滞在先のドイツから「信じられないような気持ちでいまだにいます」などとコメントを発表した。

濱口監督は、21年に監督した短編集「偶然と想像」が審査員大賞(銀熊賞)を受賞した世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭(10日開幕)で最高賞の金熊賞を争う、コンペティション部門の審査員を務める。同映画祭参加のためにドイツに向かった、飛行機を降りた段階でノミネートを知ったという。

「ベルリン国際映画祭参加のために乗っていた飛行機を降りたら、米アカデミー賞に4部門ノミネートされていて、心の底から驚きました。作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞へのノミネート、信じられないような気持ちでいまだにいます」

その上で、原作の作家・村上春樹氏(72)への感謝の言葉をつづった。

「ただ、確実に言えるのは原作者・村上春樹さんの物語が持つ普遍性がこの評価の根底にはある、ということです。心から愛する誰かを失ったとしても人生は続いていく。その人生は過酷だけれど、ほんのひとつまみの希望もないわけではありません」

「ドライブ・マイ・カー」は、村上氏が13年11月発売の「文芸春秋」12月号に発表した短編で、同誌14年3月号まで連続で掲載した「女のいない男たち」と題した連作の第1弾。14年の短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)に収められており、濱口監督は長編映画を作るために、同作に加え「女のいない男たち」に収録された6編の短編の中から「シェエラザード」「木野」のエピソードも投影し、脚本を作り上げた。

濱口監督は主演の西島秀俊(50)三浦透子(25)岡田将生(32)霧島れいか(49)ら俳優陣にも感謝の言葉をつづった。

「ただ、この物語世界を身体化し、具現化する俳優たちの負担は計り知れないものがあったと思います。西島秀俊さんをはじめとする役者の皆さんの誠実な役への取り組みにも、この場を借りて敬意と感謝を表したいと思います。このノミネートがきっかけで俳優陣の素晴らしい演技、そしてそれを支えたスタッフたちの仕事がより多くの観客の目に触れることを願っています」

日本人監督の監督賞へのノミネートは66年「砂の女」の勅使河原宏監督、86年「乱」の黒澤明監督以来36年ぶり3人目。邦画が国際長編映画賞にノミネートされるのは、19年の「万引き家族」(是枝裕和監督)以来3年ぶりで、受賞すれば09年の「おくりびと」(滝田洋二郎監督)以来13年ぶり。アジアの映画が作品賞、監督賞、国際長編映画賞にトリプルでノミネートされるのは、20年に非英語作品として初の作品賞をはじめ監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4冠を獲得した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」以来2年ぶりと記録ずくめのノミネートとなった。

授賞式は3月27日(日本時間28日)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われる。