東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第64回(21年度)ブルーリボン賞が23日までに決定し、永野芽郁(22)は2作品で主演女優賞に輝いた。さまざまな形の家族を描いた「そして、バトンは渡された」、コメディー作「地獄の花園」。演技者としての振り幅の大きさを見せた。「まさか、と思って『ホント!?』と聞き返しました。ブルーリボン賞は自分とかけ離れた賞だと思っていたので、驚きました。うれしいです」と喜んだ。

「バトン-」は母に薦められた瀬尾まいこ氏の原作を、オファーの前に読んでいた。「母は『映画化するなら芽郁がやってくれないかなあ』と言ってました」と振り返った。オファーに即答したそうで「母があの時原作を勧めてくれなかったら…。同じように出演はしていても、感じ方は違ったかも。感謝してます」。

いつも出演作を映画館に見に行ってくれる母にとって「バトン-」は特にお気に入りの作品になったそう。「4回行ったそうです。『追いバトンしてくる』って」と笑った。

8歳でスカウトされ芸能界入り。当初反対だった母は今では一番のファン。「弱音をはくと『やるって決めたのは自分でしょ』って怒られました」。今でも、母の言葉は仕事をする上での指針だ。

劇中、ピアノを弾くシーンがある。経験がなく、クランクイン3カ月前から特訓した。「どんどん本番が近づいてくるんだけど、上達が間に合っていない。いろんな人にサポートしてもらいました」と感謝し、「ピアノは趣味として続けています。『バトン-』で指導してくれた先生に習って練習しています」と明かした。

家族を描いた作品にちなみ、結婚観、母親像も語った。「(母親に)なりたいです。子育てできるような器の広さを持てたらいいです。結婚は『早くしたい』もないし『一生しない』もない。1年後に結婚してるかもしれないですよ!」と笑った。

「地獄-」ではアクションに初挑戦し、汚い言葉遣いにも臨んだ。「体を動かすのは好きなので、アクションはコツをつかめば早いかなと思いましたが甘く見てましたね。暴言は、暴言を暴言ととらえるのがストレスだったんですが、せりふだととらえて、それも1つのアクションだと思ってやっていたら、楽しくなりました」と話した。

主演男優、主演女優はコンビで翌年の授賞式で司会を務めるのがブルーリボン賞の恒例。永野は「司会の経験? ないです。頑張らなきゃですね。岡田(准一)さんに頼らせていただきます。絶対司会も上手にやられるんだろうな…。私は補助です」と笑った。

女優について「一生の職業だとは思っていないけど、満足できるまでやりきりたい」と1作にかける覚悟を見せ、受賞にも「もっと頑張れよと背中を押してもらった」と謙虚に語った。【小林千穂】

◆永野芽郁(ながの・めい)1999年(平11)9月24日、東京都生まれ。8歳でスカウトされ芸能界に。09年、映画「ハード・リベンジ、ミリー/ブラッディバトル」で子役としてデビュー。15年「俺物語!!」でヒロイン、17年、映画「ひるなかの流星」で主演。昨年は「キネマの神様」にも出演。ドラマはNHK連続テレビ小説「半分、青い。」ヒロインなど。

◆ブルーリボン賞 1950年(昭25)創設。「青空のもとで取材した記者が選出する賞」が名前の由来。当初は一般紙が主催も61年に脱退し67~74年の中断を経て、東京映画記者会主催で75年に再開。ペンが記者の象徴であることから副賞は万年筆。主演男、女優賞受賞者が、翌年の授賞式で司会を務めるのが恒例。