古舘寛治(54)が1日、東京・ユーロスペースで行われたフランス、ドイツ、ベルギー、日本、メキシコ合作映画「アネット」初日舞台あいさつで、フランス人のレオス・カラックス監督(61)から、起用した最大の理由が「一番、歌が下手だったから」と明かされた。「やっぱり、そうなんですね」と苦笑しつつも、古舘は檀上でで生歌を披露した。

「アネット」は、21年の第74回カンヌ映画祭で監督賞を受賞したミュージカル映画。米国の俳優アダム・ドライバーが演じたスタンダップ・コメディアンのヘンリーと、フランスの女優マリオン・コティヤールが演じた国際的に有名なオペラ歌手アンが主人公。“美女と野人”と、はやされるほど、かけ離れながら、2人は恋に落ち、やがて世間から注目されるようになる。ただ、ミステリアスで非凡な才能をもったアネットが生まれたことで、彼らの人生が狂い始める物語。

古舘は劇中で医師を演じた。この日、客席で2度目の鑑賞をした後、そのまま登壇して監督と右手で握手した。そして「脚本を読んだ時の感想は正直、あまり覚えていない。歌を歌うんだ…多分、採用されないだろうなと思っていた」と笑った。その上で「日本でカラックス監督の評判を聞くと、気むずかしいと…。雑誌にも、そう書いていたけれど、そんなことはなく、穏やかで。撮影が本来、遊び、エンジョイするもの、それが創作そのものだと思い出させてくれるくらい、楽しかった」と撮影を振り返った。

「アネット」には、古舘のほか福島リラ(42)が看護師、山川真里果(38)がフライトアテンダント役で出演。水原希子(31)も出演しているが、日本の俳優の印象について聞かれたカラックス監督は、以前から製作に深く関わっている、ユーロスペースの堀越謙三代表に感謝した。その上で「共同製作というと、いろいろな国が参加してくれる。その国の一部が、ストーリーと関係なく入り込んでくる感じがある。脇役だが演技してくれて良かった。1つの作品を作るのに、いろいろな国がミクスチャーされるのは、僕は気に入っている」と語った。

次回作について聞かれると、カラックス監督は「次回作も、せりふ劇になると思うと、あまりにも今回、快感だったから、戻ることが出来るかな? という不安はある」とミュージカル映画にほれ込んだと吐露したが「どうだろうな? 出来るだけ近々、撮りたい思いはあるけど」と詳細は伏せた。