神戸市のミニシアター「元町映画館」開館10周年を記念して製作された映画「まっぱだか」(片山享、安楽涼共同監督)初日舞台あいさつが7日、東京・K‘sシネマで行われた。全編、ロケを行ったご当地の神戸や大阪、京都では21年8月に封切られており、9カ月をへて、ようやく東京での公開が実現した。

出身の兵庫県で活動を続ける主演の津田晴香(27)は「関西で(21年)8月からやっていて、なかなか東京で上映できなくて。(観客が)『東京で待ってるよ』と言ってくれたのは、うれしかったけれど、皆さん、毎日の生活がある。覚えてくれているかなと不安があった」と語った。その上で、ほぼ満席となった客席を見渡して「たくさん、見に来てくださって時間を共有でき、うれしい」と喜んだ。

「まっぱだか」は、元町映画館が20年8月の開館10周年に向けて、短編映画を製作する企画を複数の監督に打診。それぞれ、別個に打診を受けた片山享(41)、安楽涼(30)両監督が2人で共同監督を務め、長編映画を撮りたいと希望。ダブル主演を津田と柳谷一成(33)に据え、片山監督が新型コロナウイルス感染拡大を受けて政府が発出した1回目の緊急事態宣言の時期に、脚本の初稿を書き始めた。その脚本に、安楽監督のアイデアを盛り込み、同12月に撮影。俳優としても活動する両監督は、出演もした。

物語は、女優を目指しながらも笑顔でいることを求められ続け、本当の自分と向き合えないナツコ(津田)と、恋人がいなくなり毎夜、酔いつぶれては絵も描けず、笑顔を失ったままキャンバスにむかう俊(柳谷)が坂道で出会う、そんな不器用な男女の青春を描いた。津田は今作で、おおさかシネマフェスティバル2022新人女優賞を受賞した。

津田は「ナツコは私の話を聞いた片山さんが、私を当て書きして脚本に落とし込んだ」と演じたナツコが自身を投影した役だと説明。その上で「私自身、前向きな感情を持てなかったけれど、撮っている時は自分と向き合い、クライマックスでは自分が思ったことを言わせていただいた。あの気持ちが見つかって良かった」と撮影を振り返った。津田とともに、舞台あいさつ前に客席で映画を見た柳谷は「お芝居の湿度が高く、見るとしんどくなっちゃう。舞台あいさつに引っ張るのが嫌なので、見るのはやめようと思ったけれど、普通に楽しみながら見た。撮影から(時間的に)距離感が生まれているから、客観視できたのかな?」と語った。

舞台あいさつを終え、フォトセッションをしている最中、客席の男性が「『まっぱだか』という題を見てね、裸を期待したんですよ!」と檀上に声をかける一幕があった。安楽監督が「そうなんですね」と返すと、津田も「出てきたじゃないですか!」と返し、笑みを浮かべた。