カンヌ映画祭監督賞を受賞した、1987年(昭62)「ベルリン・天使の詩」で知られる、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督(76)が最新作を東京・渋谷で撮影することが決まり11日、都内で会見を開いた。主演は役所広司(66)が務めることも、併せて発表された。

ヴェンダース監督は、役所について「本当に、たくさんの映画に出演している俳優さんなので、全てとは言いませんけども、少なくとも12本は拝見した。国際的な共同製作もあれば、日本の最近の作品もある。役どころは全て自分でありながら、全く異なるキャラクターなんですよね」と評した。その上で「つまり、役所さんは何か自分の中に、特別なものを持っていらっしゃって、自分というものがありながら、違う階級、時代、社会的環境の人物を演じることが出来る俳優さん」と称賛し続けた。

ヴェンダース監督は、最初に役所の演技を見た作品として96年の映画「Shall we ダンス?」を挙げ「すぐに役者さんとして好ましいと思った」と振り返った。その上で「実は、自分は好きではない俳優さんとは仕事が出来ない。残念ながら過去には、そうなってしまったことがあるんですが、最初から好きになった俳優でした。すごく悪い刑事、警官をやっていても、すごくいいなと心惹かれる」と続けた。

そして「なぜ、自分はここまで役所さんを好きなんだろうか、ということを知るためにも、お仕事をご一緒したい」と役所とのタッグが今回の企画の、大きな動機になっていると語った。

ヴェンダース監督と役所にオファーしたのは、世界的に活躍する16人の建築家やクリエイターが、渋谷区内17カ所の公共トイレを改修する、2020年(平32)から始まった「THE TOKYO TOILET」の柳井康治プロジェクトオーナーと、高崎卓馬クリエイティブディレクターだった。同氏は「僕も柳井さんもヴェンダースさんの作品が大好き。ドキュメンタリーと映画、建築と映画、東京への愛情みたいなことを全部、兼ね備えた方は、ヴェンダースさん以外、思い当たらない」と説明。その上で「清掃員の方を主人公にしてのアートフィルムを作るというのを核に、ヴェンダースさんに相談し、そのキャラクターを、日本を代表する俳優の役所広司さんにお願いすると決め、ご相談に上がり、快諾していただいた」と説明した。

ヴェンダース監督は「トイレを舞台に新作を作るのは、自分にとって大きなチャレンジ。最初、オファーをいただいた時は、えっ、トイレ? という感じだった」とオファーを受けた当時、驚いたと明かした。その上で「安藤忠雄さんのように、自分の敬愛する建築家が関わっているので、魔法のように企画が自分に開かれた。企画に関わることで社会的、都市に関して意義のあるもの、街の中にある特別の場所に関して何かが出来ること、役所さんという素晴らしい俳優と自由に物語を紡ぐことが出来る。4つの物語を温めていて、自分の中で企画が動きだした」と熱く語った。