稲葉友(29)の長編映画初主演作「恋い焦れ歌え」(熊坂出監督、27日公開)舞台あいさつ付き先行上映が12日、東京・シネクイントで行われた。

映画では、稲葉が演じた清廉潔白な小学校臨時教員・桐谷仁が、ある夜、覆面の男に襲われて身も心も陵辱される、性被害のシーンが描かれる。完全オリジナル作品として原作も担当した熊坂出監督は「レイプのシーンも、性被害を、真っ向から、ちゃんとやろう、やらせていただかなければと思い、こういう話を書いた」と語った。

その上で「今、性被害とか、この業界の良くないところ、直さなければいけないことが本当に、たくさん出てきて。僕は、うみを出すことで、いいことだと思っていて」と、3月上旬から相次いで告発、報道がなされた、映画監督による女優への性行為強要問題について言及。その上で「象徴となるような役柄だったので大変だったと思う」と稲葉をねぎらった。

熊坂監督は、米国の著名な演出家サンフォード・マイズナーの言葉「演技は、フリをすることじゃない。本当にやることである」を紹介。その上で「あの場の稲葉さんは、本当にレイプをされていたんですよね。されていないんですけど…心の中では、されていたと思って、僕らは撮っていました」と、性被害を受けるシーンを演じた稲葉の心中を推し量った。その上で「実際に性被害を受けた方に誠実であろうとするならば、引き受けてくださらないことには、この映画は撮れなかった」と稲葉に感謝した。

そして「スタッフ、キャストが支えて下さいました。レイプする犯人を演じた小久保(寿人)さんが支えるんです。それが現代劇のいいところだと思っています。互いに支え合うことが本当にベースとなった、良い現場を作ってくださった感じがしています」とキャスト、スタッフ全員に感謝した。