河瀬直美監督(52)が23日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた、21年の東京五輪公式記録映画「東京2020 SIDE:A」(6月3日公開)完成披露試写会に登壇した。

河瀬監督はトークの中で、メインテーマ「The sun the moon」を手掛けた藤井風(24)について言及。「風さんは、コロナ禍でオンラインで曲を私の元に届けてくれた。コロナ禍でデビューした若いアーティストの声、奏でるピアノ、歌詞の中に存在しているものは、全てを愛で包むんです」と評した。

その上で「アスリートは競技を通し、ある種の勝ち負け、金メダルのために切磋琢磨(せっさたくま)して日常を過ごされますけど、勝ち負けを超える愛みたいなものがあって。それと、風さんの歌が最後に全てを包み込んでくれる。彼はエンドクレジットの最後まで愛…言葉にすると、少し軽くなってしまうかも知れないけれど、全ての命の中に、それがある」とアスリートと藤井の曲の親和性を強調。

「いろいろなことがあるけど、それを持って包むことができたら、この時代に分断ではなく、繋がりを持って、みんなが笑っていられるんじゃないか、ということを…。今日、映画を見た皆さんは、風さんの言葉によって多分、映画館を出る時に、この世界って素晴らしいなって、思ってもらえるんじゃないかって思います」と語った。

河瀬監督は、舞台あいさつを終えた足で「東京2020 SIDE:A」がクラシック部門で上映される、フランスのカンヌ映画祭に向かう。大会関係者、市民、ボランティア、医療従事者ら非アスリートたちを描いた、6月24日公開の「-SIDE:B」は製作中だが、同監督は「(カンヌの会場の)レッドカーペットを歩いた先に…わが国日本と言ってしまいますが、この国にしか出来なかったオリンピック。コロナ禍で、無観客で、それでもアスリートの、ほとばしる汗を、みんなに届けたかった。その形は絶対、歴史が証明してくれると思って世界に届けてきたい」と意気込みを語った。

その上で「スポーツにおいて、最高の晴れ舞台である五輪において、金メダルを取ることは最高の姿だと思います。けれども、人生の金メダリストであることが、私たち、全ての人たちに与えられた舞台。この映画を見て、アスリートだけでなく、いろいろな苦悩、悲しみ…そういう場にいて、恐怖で心地よくない場所にいたとしても、必ず舞台が用意されていることを信じていたい。そういう気持ちを受け取ってもらえると、この映画が幸せになれる」と、時に涙声になりながら熱く語り、カンヌに向かった。