東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第65回(22年度)ブルーリボン賞が23日までに決定し、Koki,(20)が俳優デビュー&初主演作「牛首村」(清水崇監督)で新人賞を受賞した。

「まさか、いただけるとは思っていなかった。(製作)チームの顔を思い出し、ウルウルしてしまいました」と喜びをかみしめた。今回の受賞が、今後、俳優として歩んでいく上での「大きなエネルギー」だとした上で、アドバイスもくれた父の木村拓哉(50)を「1人の人として、こうありたい」と、人として、俳優として目標にしていく考えを示した。

受賞の知らせは、撮影から帰る車の中で受けた。その時は信じられず「賞をいただいたの?」と、母の工藤静香(52)に2度も聞き返した。木村と姉のCocomi(21)を含め、家族3人は口をそろえて「おめでとう。一緒に作りあげたチームに感謝だね」と祝福。中でも、木村は「よく頑張ったね。すごいね」と、フランクに祝福してくれたという。

デビュー作として巡ってきた「牛首村」は「1人では見られない」ほど苦手なホラーで、演じるのも一人二役で演じる双子の姉妹という難役だった。それが仮の台本を読んで「どうなるんだろう…読み進めたい」と夢中になって、のめり込み、出演を決めて呼吸法などレッスンを受けた。

一人二役で演じる17歳の女子高校生・奏音(かのん)と双子の妹・詩音(しおん)の役作りは、姉のCocomiとの絆、姉を守りたいと思う自らの気持ちを重ね合わせ、見いだした共通点からつかんでいった。

幼少期から、父の木村が出演したドラマ、映画を見て俳優業に強い憧れを持っていた。撮影前、父にアドバイスを求めた。

「強く表現するのか(心の)中で強い気持ちにするのかなど、具体的に相談しました。家では直接、話しました」

クランクイン前に送られた「enjoy and do your best」とのメッセージを台本の裏に書き込んで撮影に臨み、富山ロケの間に電話やメールで相談したこともあった。

「楽しめたと心から思えるくらいまで集中、努力して、力を注いで頑張りなさいね、という意味で父は書いてくれたと思う」とメッセージの意味を解釈し、日々の撮影に取り組んだ。クランクアップ時には「心の底から楽しめた」と思えた。その言葉通り、劇中では奏音と詩音を明確に演じ分け、ラストでは悲しくも壮絶な姉妹の愛を演じきった。完成した作品の試写を家族と見た際、父からは「よく頑張った。やるね」と褒められたという。

昨夏に“俳優・木村拓哉”の生の芝居を直に見る、初めての機会に恵まれた。京都に行く機会があり、「レジェンド&バタフライ」の現場を訪問。信長が酒を飲んで、倒れるシーンを見て「すごく遠くから見ていたんですけど、集中力と雰囲気が伝わってきて。自分のお父さんだけど、それ以上に憧れ、尊敬しました。シンプルに本当にすごいなと思いましたね。初めて見る父の顔と(俳優としての)一面で、とても刺激を受けました」。父ではなく、俳優として心から尊敬した。

共演したいか? と聞かれると「もちろん、共演もあるんですけど、父の現場に行って学びたいなと思いました」と、今後も可能な限り俳優・木村拓哉の芝居を生で見て、学びたいと熱望。「1人の人として格好良い、こうありたい。父の姿を見て、自分も父みたいになれたら良いな、なりたいなと心の底から思いました。演じることに対する熱量だったり、エネルギーを注いでいる姿を見て、自分の演じている姿を見て、誰かの心をつかみ、動かせるような人になりたいなと思いましたね」と父の背中を1人の人間として、俳優として追っていくと口にした。

すでに俳優としての2作目となる、アイスランドの俳優で監督のバルタザール・コルマウクルの新作となるアイスランド映画「Touch(原題)」の撮影に臨んでいる。広島、英ロンドン、アイスランドで行われた撮影中、常に自らに言い聞かせ、立ち返っていた芝居の原点こそ、「どんなに間を取ってもいいから、感情から動いてね」という、清水崇監督の言葉だった。

「牛首村」への出演を経て「普段の生活の中で、怒っている人を見たりなど、ささいなところでも感情の種類、表し方を学ぼうとする自分ができた」と、普段の生活から俳優の目線を持つようになった。「『牛首村』で、本当に演じることが好きだな…楽しくて、自分が、こんなに一生懸命になれるものなんだと感じた。映画というものが、こんなにも皆さまが情熱、時間を注いで大切に作り上げるものなんだと、学んだ」。

今回の受賞は「初めての経験、挑戦に記者の皆さまが期待してくださっている」と感じることができた、俳優として歩んでいく今後への大きなエネルギーだ。「初めての演技の経験、一緒に映画を作るチームワーク…宝物のような経験を大切に、いろいろな役に挑戦し、頑張りたい。皆さまの期待に応えられるように(受賞で)今まで以上に、120%以上に頑張りたい」。Koki,は、俳優の道を真っすぐに歩んでいく。【村上幸将】

◆ブルーリボン賞 1950年(昭25)創設。「青空のもとで取材した記者が選出する賞」が名前の由来。当初は一般紙が主催も61年に脱退し67~74年の中断を経て、東京映画記者会主催で75年に再開。ペンが記者の象徴であることから副賞は万年筆。新型コロナウイルス感染拡大防止のため授賞式は3年連続で開催を見送ってきたが主演男、女優賞受賞者が翌年の授賞式で司会を務めるのが恒例。