安藤サクラ(37)とHey!Say!JUMP山田涼介(30)が、映画「BAD LANDS バッド・ランズ」(原田眞人監督、9月29日公開)で、姉弟役で初共演することが29日、分かった。

直木賞作家・黒川博行氏の小説「勁草」を、原田眞人監督(73)が主人公の性を女性へと大胆に転換して映画化。主演の安藤は、犯罪グループの元締を補佐する特殊詐欺を生業とする橋岡煉梨(ネリ)を、山田はネリの疫病神的パートナーとなるサイコパスな弟・矢代穣(ジョー)を演じる。

カンヌ映画祭脚本賞を受賞した、是枝裕和監督の「怪物」に主演した安藤と、21年「燃えよ剣」以来2度目の原田組参加となる山田が初タッグを組む。演じるのは、持たざる者が持つ者から生きる糧をかすめ取り、生き延びてきた地で、特殊詐欺に加担し、億を超える大金を手にしてしまう姉弟役だ。

安藤は「山田さんは本(台本)読みの時から『あ、矢代だ! ぴったりだな!』と思っていました。私と山田君でどんな化学反応が起きるのか楽しみで」と振り返った。山田も「実はたまたま1度、プライベートでお会いしたことがありました。すごく気さくな方で、お姉ちゃん役と聞いた時は安心感がありました。安藤さんだったら委ねられるな。安心してやらせていただこうと思いました」と、初共演ながら安藤への絶対的な信頼を口にした。

映画は、オレオレ詐欺犯罪グループの内実がリアルに描かれた原作を、15年の発売当時に読んだ原田監督が「主人公を女性にしたらどうだろう」と、主人公を女性にした方が映画にした時に、おもしろさや深みが出ると考え、映画化を熱望。ただ「私が手を挙げるのが遅かったために、映画化権は某社に渡っていた。辛抱強く」6年も待って、企画を立ち上げ、自身の22年の前作「ヘルドッグス」製作チームとともに映画化した。同監督は「性転換を心よく承知してくださった黒川さんにも感謝です」と、黒川氏に感謝した。

原田監督は、俳優陣についても「理想のキャストも組めました」と自信を見せた。安藤については「生きにくいを生き抜くネリの魂の綱渡りを、美しく悲しくいとおしく舞ってくれました。世界の主演女優賞を全て差し上げたい名演です」と絶賛した。

また、山田の起用は「燃えよ剣」での沖田総司役の演技から、再タッグを希望したものだと明かした。「原作の沖田総司が現代によみがえったらこうなるのではないか、というコンセプトのもと山田涼介に参加してもらいました。沖田以上に切なく危険な若者を演じきった涼介の天才に私は魂を食いちぎられました」と、最上級の賛辞を与えた。

山田も「原田監督とは、1度映画でご一緒しましたが、毎日本当に緊張感があり、命を削っているような現場でした。どんなシーンでも緊張感がある現場というのは、なかなかなく、貴重な経験だと思って一生懸命やっていたので、またお声掛けいただいてとてもうれしかったですね」と同監督との再タッグを喜んだ。

撮影は21年12月から22年1月にかけて行われた。安藤は「自分の知らない世界だったので登場人物たちのキャラクターの魅力にとてもワクワクしました」と世界観にほれ込んだと明かした。そして「原田監督とは自分が思ったことを、いろいろ相談するようにして、集中すべき時に集中して、“自分らしくいる”という過ごし方ができるとてもメリハリのある現場で毎日楽しく過ごしました」と撮影を振り返った。

金を引き出す、ただそれだけだったはずの、ネリとジョーが、さまざまな巨悪が迫る中、危険な地から逃れられるのかが最大の見どころとなる。安藤は「いろいろなキャラクターの俳優さんたちが交わって、どのシーンも楽しく魅力的で見たことのない化学反応を起こしていきますので、ぜひご期待ください」と呼びかけた。山田も「ぜひ、ハラハラドキドキしたスピード感あふれる本作を楽しみに待っていて欲しいと思います」と期待感をにじませた。原田監督も「彼らを彩る関西演劇陣の濃厚なアンサンブルにも圧倒されます。1人1人紹介するのは公開間近まで待たねばならないのがとても残念」と力を込めた。

原作の黒川博行氏 監督の名を聞いて、一も二もなく映画化に同意した。名匠・原田眞人--。多くの作品をわたしは見ていた。「クライマーズ・ハイ」や「わが母の記」をはじめ、近作の「関ヶ原」や「検察側の罪人」、「燃えよ剣」は重厚にしてスケールの大きい傑作だった。あの原田監督がわたしの「勁草」をどんなふうに映像化してくれるのか、楽しみでしかたなかった。そこへ演じるのが安藤サクラと山田涼介、これも申し分ない。安藤さんのさわやかな個性と自然な演技は原作の犯罪性をきれいにすくいとってくれるだろうとわたしは期待し、山田さんとのコンビネーションもあいまって、期待以上のみごとな出来栄えになった。原作者として、ほんとうにうれしい。