盲目のシンガー・ソングライター佐藤ひらり(22)が2月29日、大学の卒業記念ライブを都内で行いました。3月で武蔵野音大を卒業し、その後は、学生との“二刀流”ではなく、音楽活動に専念します。

ライブでは、最初のMCで「皆さん、こんにちは。勝手な想像ですが、皆さんが元気でうれしいです。全盲の、もうすぐ学生でなくなる佐藤ひらりです。私、こうみえて目が見えないので、笑ったり、手拍子をしてもらえるとうれしいです」。エスプリの効いた表現で全盲だということをサラリと伝え、客席の反応が自身の耳で分かるように拍手を求める。確かに、言われないと、じっと音楽に聞き入ってしまうかもしれません。拍手があれば「コールアンドレスポンス」として、佐藤と客席との“交流”が生まれます。

歌声は透き通るような高音が魅力で、耳に心地よく届きます。歌詞もしっかりと分かり、曲の世界観が脳裏に浮かびます。カバー曲を歌唱した際は、オリジナル歌手との比較を自然としてしまい佐藤の方が明確に情景が思い描けました。

こう言っています。「私は目が見えないので、(歌を聞く人の)『見ている情景』っていうものは絶対、目に浮かべることができないだろうなって思っていて。そこは自分の歌を作る中での悩みでもあったのですが、でもちゃんとメッセージを伝えれば、心の中の情景に私の歌がマッチすることができるんじゃないかなって思って。自分は音とか感覚とかにおいとか、そういう『五感の中の四感』でしか感じることはできませんが、私の四感の情景と皆さんの見えている情景が重なるといいなと思って歌を作っています」。曲の世界観が聞き手に届くように常に意識をしていることが分かります。

絶対音感があるからなのか、歌唱は音程がずれません。それも耳に心地よい理由につながるのでしょうか。以前、音楽を専門に学んだ人が「あの歌手は音程が全く崩れないかなら聞いていて心地よい」と言っていたことを思い出します。

生まれつき全盲で、5歳の時に音楽に目覚めました。それから音楽活動に打ち込んで海外でも活動。東京2020パラリンピック開会式で「君が代」を独唱し、世界中に歌声を届けました。

「目が見えないのにすごい」。子どものころから、いつもこの言葉を言われてきたそうです。「…なのに」は余分な言葉。歌の実力だけで評価をして欲しいとずっと不満に思ってきました。目標は「えっ、この人は目が見えないの!」と驚かれる歌手になること。そう、スティービー・ワンダーのようになることです。【松本久】