全国23万人の自衛官でただ1人の「歌手」がCDデビューする。海上自衛隊東京音楽隊3等海曹、三宅由佳莉(26)が、アルバム「祈り~未来への歌声」を8月28日に発売することが14日、分かった。日大芸術学部音楽学科声楽コースから自衛官初の「歌手採用」で海自に入隊。これまでに海自音楽隊の公演で美しい歌声を披露してきた。かれんなルックスもあって、既に熱心なファンもいる。「海上自衛隊の歌姫」として注目されそうだ。

 今年春、レコード会社スタッフが、ニュース番組に出演していた三宅に魅了された。「歌がうまい上、上野樹里似の美人。経歴もすごい」。熱烈なオファーに応える形でCDデビューが決まった。三宅は「少しでも自衛隊を知っていただければと思っています」と謙虚に受け止めている。

 初アルバムは12曲を収録する。海自音楽隊長の河辺一彦氏が制作した「祈り」などオリジナル曲から、「ふるさと」「翼をください」「アメイジング・グレイス」などのクラシカルな有名曲まで幅広いジャンルから選曲。全て海自東京音楽隊が演奏している。

 発売に先駆け、今月17日に「祈り~a

 prayer(piano

 version)」の音楽配信がスタートする。大震災被災者に向けたポップス調の応援歌をシンプルなピアノ演奏版にアレンジ。透明感ある歌声が印象的だ。

 大学から海自が歌手を募集していると聞き、09年に自衛隊初の「歌手採用」で入隊した。「海外演奏する機会があることを初めて知って。歌を生かせて、さらに外に出て発信できることに魅力を感じました」。大手百貨店の内定を辞退して入隊を決めた。入隊後5カ月間、カッター(短艇)訓練や水泳、ロープワーク、ほふく前進など海自自衛官として基本的な訓練を受けた。「規則を守りながら管理された状態で生活するので最初はカルチャーショックでした」。

 AKB48の大ファンだ。コンサートや前田敦子の握手会に足を運んだこともある。今年の選抜総選挙は「卒業するから」と板野友美に1票を投じた。ヘアスタイルも「『前髪は篠田麻里子にしてください』とカットしてもらいました」。

 自衛官としての強い責任感を持っている。今後、個人としての公演活動は考えていない。「音楽隊員の三宅として活動することに誇りを感じます。自衛官として歌うことに意味があると思います」。公の場で歌う時は制服を必ず着用するなど、自衛官としてのプライドに揺るぎはない。

 ◆三宅由佳莉(みやけ・ゆかり)1986年(昭61)12月14日、岡山県生まれ。日大芸術学部音楽学科声楽コース卒。09年4月に海上自衛隊入隊。同年9月、東京音楽隊に初のボーカリストとして配属。カラオケの十八番は「時の流れに身をまかせ」「涙そうそう」など。163センチ。血液型A。

 ▼海上自衛隊音楽隊

 海自には東京、横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊に音楽隊がある。任務となる音楽演奏は「士気高揚」「広報」「儀式」が目的。各種セレモニーやイベント、五輪など国家行事の演奏も担当。定期演奏会や各地での公演、慰問演奏も行い、海外でも演奏機会はある。レパートリーは行進曲、クラシック、ジャズなど。音楽隊員になるには、自衛官採用試験を受けなくてはならない。入隊後、教育隊で訓練を受け、適性検査などを受けて音楽隊に配属される。