毎回、見終わって、ぞわっとしてくるテレビドラマに出会った。「エルピス-希望、あるいは災い-」。

マンネリの深夜バラエティー番組の女性MC(司会)と坊ちゃん育ちの局員が放った少女殺害事件で死刑が確定した男の冤罪(えんざい)報道。新たに自身の支援者の親族の犯行が疑われる大物政治家からの圧力。

実在の政治家、あの人、この人の顔が浮かぶ。テレビ局の忖度(そんたく)、萎縮、保身、陰湿な人事…。私もさんざん見てきた光景だ。

プロデューサーは、このドラマのためにTBSから後押ししてくれた関西テレビに移った佐野亜裕美さん。朝日新聞の別刷り、「be」で大きく取り上げられ、局の内実を赤裸々に描いたことにふれられると、「自分たちが一番よく知っている世界なんだから描くのは当然。その方がおもしろい」と痛快な答えが返ってくる。

脚本は朝ドラの「カーネーション」などで知られる渡辺あやさん。島根在住の渡辺さんのもとに、第一印象は「しょぼくれた柴犬が来た」だったという佐野さんは20回も通った。

その渡辺さんはライターの福田フクスケさんのインタビューに「大組織のなかにも、これは絶対におかしいと感じてなんとかしようともがいている人が確実にいるんです」と話している。そこに私は一筋の光を見る思いがする。

「戦」という字が1字漢字に選ばれ、絶対におかしいと感じることの多かった2022年。来たる2023年が決して「あるいは災い-」ではなく「-希望」であることを切に願いつつ、今年もこのコラムのご愛読ありがとうございました。

「エルピス」最終回は今夜10時、フジテレビ系列で放送です。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。