侍ジャパン連覇への道は閉ざされてしまったが、大リーガーたちの競演に夢を見せてもらった。心からの拍手を送りたい。

この一戦に敗れた悔しさは長い物語を戦うペナントレースの1敗とは違う。短期決戦に濃密なドラマが凝縮される。1本のホームラン、1つのエラー、1球の失投が趨勢(すうせい)を決定づける。スリリングな展開の連続だった。

ドラマのメインキャストは、日本人の大リーガーたちだった。大谷翔平、鈴木誠也、吉田正尚。この3人が打線の芯として大きな役割を果たしていた。さすが、世界の大舞台で日々もまれている経験がものをいう。

特に印象的だったのは東京ドームで観戦した日韓戦だった。初回、ピッチャーの菊池雄星がまさかの連打を浴び、3失点。嫌な雰囲気が球場を覆った。しかしその重い雰囲気は鈴木が放った2ランで霧消。一瞬でスタンドの照明が明るくなったような激変ぶりだった。そして3回、大谷の登場でスタンドのボルテージは一気に最高潮に達した。菊池にとっては花巻東高校の後輩。野球のドラマはリアルなだけに映画よりも劇的だ。その後も鈴木、吉田が豪快なプレーを見せ、大リーガーパワーを世界に示した。

夢は破れたが、打線の破壊力という意味では今回のチームは歴代屈指だった。

個人的に特筆したいのが周東佑京。日韓戦の9回、センターの守備に就いた彼が韓国チームのジョーンズの大飛球をフェンス際でジャンピングキャッチ。球場全体が騒然となるほどの超超ファインプレーだった。あの時、彼は一体何メートル跳んだのだろう。周東はチェコとの最終戦でも3ランを打ち、お立ち台に立ってヒーローインタビューを受けた。若くてカッコいい。まんま漫画の登場人物のようだ。

投手陣にも見どころは満載だった。オーストラリア戦では菅野智之が4回無失点。ベテランらしい粘りの投球だった。そして2番手で投げた隅田知一郎は7奪三振。試合の流れを引き寄せた。種市篤暉も2度三振を奪った。リリーフ陣の厚みも感じさせた。

1戦1戦が天王山となる、強豪ぞろいのWBC。このたび日本代表の戦いは終わった。だが、メジャーで鍛えられた打線、粘り強い投手陣、これらが混然一体となって勝負どころで流れを変える力は本物だった。次の戦いは2027年のプレミア12。28年ロス五輪の出場もかけた戦いだ。マイアミで、悔しい敗戦を喫し、チームに帰った侍たちが、これからどう戦い、27年にどのようなドラマを見せてくれるのか。楽しみにしている。

彼らに今、大きな声援を送りたい。「目指せ世界一!」