17年ぶりに国政復帰し、はかま姿で登院した立憲民主党の鎌田さゆり衆院議員(21年11月10日撮影)
17年ぶりに国政復帰し、はかま姿で登院した立憲民主党の鎌田さゆり衆院議員(21年11月10日撮影)

先月の衆院選で初当選した新人議員97人を含む国会議員の「初登院」が、特別国会召集日の11月10日に行われた。新人議員にとっては初日の恒例セレモニーだが、今年はコロナ禍での初実施だった。

「開門!」の合図で国会の正門があくのは毎回、午前8時。早朝(または前夜)から一番乗りを目指す議員や大勢のメディアが集まる。今回もメディアの数だけは「密状態」だったが、例年なら正門の中に入ることができる親族などの同行者の数はかなり制限されたようだ。親族や秘書は1人ずつ。正門前で記念写真を撮影した後、議員を見送るだけの支援者や親族も多かった。

国政選挙で当選した議員の初当選をこれまで何度も取材してきたが、それぞれの思いや決意をコスチュームに託す人も多い。

はかま姿で登場したのは、選挙違反事件の連座制適用前に辞職以来、実に17年ぶりの国政復帰となった立憲民主党の鎌田さゆり氏(56=宮城2区)。百人一首競技かるたの元準クイーンで、はかまはタイトル戦での「正装」だ。「戦いに臨む際の、私にとっての正装です。(17年ぶりの国会は)初心にかえった気持ち。ただ緊張している初心ではなく、『やったろう』というような初心」。

おろしたてのスニーカーで初登院したれいわ新選組大石晃子衆院議員の足もと(21年11月10日撮影)
おろしたてのスニーカーで初登院したれいわ新選組大石晃子衆院議員の足もと(21年11月10日撮影)
れいわ新選組の大石晃子衆院議員(21年11月10日撮影)
れいわ新選組の大石晃子衆院議員(21年11月10日撮影)

純白の白が際だつスニーカー姿だったのは、れいわ新選組で初当選した大石晃子氏(44)。大阪府職員時代、当時の橋下徹知事にもの申したことでも知られる。今回は選挙区(大阪5区)で敗北し、近畿比例ブロックで復活当選。全議員の中でいちばん最後に議席が確定した。白いスニーカーを選んだのは「国会でフットワークよく活動したいから。スーツにはヒールと思ったけれど、靴下とスニーカーじゃないと走れません」。れいわ山本太郎代表のネクタイも、党カラーのピンクが入ったレジメンタルだった。

そんな中、新人の衆院議員ながら「大物」も。河村建夫元官房長官との自民党内公認政局をくぐり抜け、参院議員から鞍替えで衆院初当選した林芳正外相(60)。ほかの新人が徒歩やタクシーでやってくる中、大型ワゴンでさっそうと正門前に乗り付け車を降りた。

「新人衆院議員」として初登院する林芳正外相(21年11月10日撮影)
「新人衆院議員」として初登院する林芳正外相(21年11月10日撮影)

実は参院と衆院は、バッジの色が異なる。悲願の衆院鞍替えで「ポスト岸田」の正式な資格も得た林氏は「新しいバッジをいただいて有権者の付託の重さを感じる」と、感慨深げな表情だった。

新人議員以外は、正門ではなく別の門から車で入ってしまう議員がほとんどだが、「初心」に戻るためか、ベテランたちも正門を入る。日本維新の会とともに、キャスティングボーダーになりつつある国民民主党の玉木雄一郎代表(52)は、なぜか超短髪になっていた。「選挙の疲れが出て散髪中、ずっと寝ていて、気づいたらこんなことに」と笑いつつ「心機一転、初心にかえって頑張りたい」。

一方、議席減で辞任した枝野幸男前代表の後任を選ぶ立憲民主党代表選に、出馬の意欲をみせる「なぜ君」小川淳也氏(50)は、正門から国会の中に入ることができないフリー記者らの呼びかけに応じ、1度門の中に入りながらわざわざ戻ってきた。「(代表選出馬に必要な推薦人)20人のハードルは低くない。あまり前のめりにならず、着実に」。まじめすぎるのが弱点ではないかと問われると「よく自覚しています」と苦笑しつつ「短所を、新しい時代の強みにしたい」と応じ、再び門の中に入っていった。

特別国会召集日、開門となった正門から中に入っていく衆院議員たち(21年11月10日撮影)
特別国会召集日、開門となった正門から中に入っていく衆院議員たち(21年11月10日撮影)

衆院議員の任期は4年。しかし、衆院は「常在戦場」で、いつ次の衆院選が行われるか、解散権を持つ時の首相しか知らない。次の選挙の後、再び新たな任期を得て、国会議事堂に戻れる保証は、どこにもない。今回、快晴下での初登院では、さまざまな人生模様がみられた。新たな任期での初登院は、恒例のセレモニーである半面、次の衆院選へのスタートが切られた、緊張の瞬間でもある。【中山知子】

特別国会招集日、開門前の早朝の国会議事堂(21年11月10日撮影)
特別国会招集日、開門前の早朝の国会議事堂(21年11月10日撮影)