今日で2023年が終わる。今年の永田町は年末まで自民党の派閥、特に安倍派をめぐる「政治とカネ」の問題で大揺れとなった。これまでに、多額のキックバックを受けた疑惑が出ている安倍派の大野泰正参院議員、池田佳隆衆院議員の事務所など関係先が東京地検特捜部の強制捜査を受け、安倍派の塩谷立座長や有力幹部グループ「5人組」といった幹部への任意の事情聴取が行われたことも明らかになっている。

30数年前に政財界を揺るがせたリクルート事件に匹敵する問題といわれる中で、岸田文雄首相の対応の「鈍さ」を指摘する声は与野党から出ている。首相は、政治改革に向けた新組織を、自民党に年明けに設置する方針を示しているが、立憲民主党の泉健太代表は「あまりに責任感がなさすぎる。今でもできることがある」と批判。身内の自民党の石破茂元幹事長も安倍派への強制捜査が行われた19日、政治改革を協議する新たな党組織の立ち上げ方針を「少なくとも年内には示さないと」と訴えていたが、首相は仕事納めの28日に「いずれにせよ、強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければ」と述べただけで、具体的な説明はなかった。

「後手後手」の対応がもはや定番となっている岸田首相らしい対応ではあるが、自民党内では「すぐに方針を示せるほど簡単な話ではない」(関係者)と理解を示す声もある。ただ重要な局面での説明の仕方や打ち出し方がうまくない首相のいつもの姿が、年末まで現れてしまう形になった。

そこで今、注目されているのが来年1月4日の首相の年頭記者会見だ。首相は例年、4日に伊勢神宮を参拝して現地で年頭会見に臨む。その場で、何を語るのか。「政治とカネ」について何らかの方針を示せるかが大きな関心を集めている。

今年の年頭会見。岸田首相は今年の干支(えと)「癸卯(みずのとう)」について「去年までのさまざまなことに区切りがつき、次の繁栄や成長につながっていくという意味があると言います。私は、本年を昨年のさまざまな出来事に思いをはせながらも、新たな挑戦をする1年にしたい」と述べ、挑戦することの1つに「異次元の少子化対策」を挙げ、大きな決意をにじませた。

ただ「異次元」というワードにばかり注目が集まり批判も出たため、その後は封印。通常国会冒頭の施政方針演説では「従来とは次元の異なる」と変わり「目玉」の表現が事実上撤回される事態となった。決意の先走りだったかどうかは分からないが、6月に方針がとりまとめられた後も、首相の大きな「実績」となった感じはあまりなく、与党内でも「異次元は看板倒れだった」と指摘する声を聞いた。

今年の同じ1月4日には、東京都の小池百合子知事が仕事始めのあいさつで、少子化対策として0~18歳の子どもがいる都内の子育て家庭に1人当たり月額約5000円の給付を、所得制限なしで検討していることをサプライズで表明。その後「018サポート」として、申請の受け付けもすでに始まった。手続き方法などをめぐり混乱や批判も指摘されているが、小池氏はその後も「国に先行する」として高校授業料無償化などの子育て支援策を相次ぎ表明。国の少子化政策と対照的な流れを意識したような流れとなった。

来年も1月4日に首相は伊勢神宮を訪れた後、年頭の会見を行う予定。岸田首相にとっては、与野党から声が出ている党改革や政治改革についてどこまで踏み込むのかが大きな焦点となっている。ちなみに、小池氏も仕事始めに合わせて職員にあいさつを行う予定。2024年は都知事選の年でもありどんな発言をするのか関心が注がれている。

年末年始はすぐに終わり、すぐに「実戦」の時がやってくる。2024年、岸田首相はどんなスタートをするのだろうか。【中山知子】【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)