2024年もまもなく終わろうとする時期に入った、今年の年末。1年の世相を1文字で表す恒例の「今年の漢字」が12日に発表され、3年ぶり5度目の「金」が選ばれた。
「きん」と読むか「かね」と読むか、同じ「かね」でもカタカナの「カネ」と読むかで、印象はかなり異なる。夏のパリ五輪・パラリンピックでの日本選手団の金メダルラッシュという明るいニュースの一方で、「かね」は、深刻な社会問題になっている闇バイト強盗事件も反映した側面もある。「カネ」となれば自民党裏金事件の「政治とカネ」となる。身近な漢字でもあるが、1つの漢字で今年のさまざまな側面を表現する形となった。
「今年の漢字」が発表される時期になると、時の首相も「今年の漢字」を問われ、答える。石破茂首相は「今年の漢字」が発表された12日、自身にとっての「今年の漢字」を問われて「謙」と答えた。「1字で、というのは難しいが、謙虚の『謙』」と切り出し「謙虚に、ひたすら己をむなしくして、いろんな方の意見を素直に承る。今年の後半は、この言葉をかみしめながら過ごしている」と述べた。
首相に就任してまもなく、裏金問題に関して与野党論戦を行わないまま衆院解散に踏み切ったが、10月27日の衆院選で大敗。自民党が少数与党に陥ってしまったことで、政権運営はかつてない苦しいものになった。野党の協力なしに、国会審議もままならない現実について、率直な感情を漢字1文字に託した形になった。石破首相と戦った自民党総裁選で敗れたものの、林芳正官房長官が今年の漢字を「動」と答えたのとは、かなり対照的だった。
石破首相が選んだ「謙」という漢字は、歴代の首相の「今年の漢字」に比べても、どこかひけ目を感じさせるような言葉になったと感じる。たとえば、長期政権となった第2次安倍政権の安倍晋三元首相は「夢」や「動」「挑」「転」「始」など、前向きなイメージを含んだ漢字が並んだ。菅義偉元首相は「働」で、石破首相の前任、岸田文雄前首相も「拓」「進」「克」という感じ。政権運営に対する批判があっても、自民党が「1強」だったバックグラウンドがあったからこそ歴代首相には前向きな言葉が浮かんできたはずだ。
それが一転、それまでの1強状態から、30年ぶりの少数与党内閣になったことで、謙虚に野党の声も聞かないと、政権運営も進まない。石破首相は「今年の漢字」にも、野党への配慮をにじませていたように思う。
ただ、今月5日から2024年度補正予算案の審議が始まった衆参両院の予算委員会では、石破首相の答弁は、「謙虚」一辺倒ではないように感じる。もともと、幅広い政策に通じてきたことで知られる首相は、野党側の質問に、時に「おっしゃることには、すべて同意でございます」と歩み寄ってみせたかと思うと、厳しい追及には、むっとしたような表情を隠さず、反論する場面も目立った。
「話の長さ」への苦言もあった。10日の衆院予算委員会で質問に立った立憲民主党の長妻昭氏は「総理は予算委員会では、よどみなく答弁をされている」とした上で「はじめの正論は聞き入ってしまうが、議事録を見ると質問にほとんどお答えになっておらず、はぐらかされていると思う」とチクリ。「最近は『石破論法』というようなことがいわれている。はじめに結論を言って、正論は後からお願いしたい」とくぎを刺され、自席でうなずきながら応じていた。
謙虚なように見せながらも、譲らないところは譲らない。少数与党という不安定な場所で、蓄積してきた自身の持ち味や持論を、出していいのか、いけないのか。短い補正予算案の審議ではあるが、石破首相にはそんな「揺れ」も感じられる。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


