「攻撃は最大の防御なり」は、よくいわれるフレーズだ。攻めが、自分の立場を守ることにつながることは多々あるのも事実。ただ、最近の国民民主党の「攻め」的な戦略は、必ずしも自分たちの立場を守ることにつながっていないケースもある。「どうした、国民民主党」といわれるゆえんとも感じている。
同党は2020年9月、現在の形として結党以来「対決より解決」を主張。昨年の衆院選では「手取りを増やす」というキャッチフレーズのもと、「年収103万円の壁」の178万円への引き上げなど、有権者の心に「刺さる」政策を訴えてきた。党幹部が「売れない地下アイドル」「視力検査の数字のような支持率」と自虐的に振り返る不遇の時代を経て、物価高の中、シンプルなメッセージが支持され、これまでは伝わらなかった政策が多くの支持を集め、議席4倍増で躍進。少数与党の石破政権に対し、キャスチングボートを握る存在になった。「103万円の壁」178万円への引き上げやガソリン暫定税率廃止は、与党幹事長との合意書まで作成されたがまだ実現されておらず、そうした政権側の不誠実な態度を批判しながら攻めの姿勢を打ち出し、さらに支持率も増やしてきた。
しかし、最近の国民民主について「攻めには強いが守りには…」(自民党関係者)という声を聞いた。それが顕著となったのが、5月28日の玉木雄一郎代表の政府備蓄米をめぐる「えさ米」発言問題だ。
玉木氏は小泉進次郎農相への質問で、約100万トンの政府備蓄米について、毎年約20万トンのコメを政府が買い入れ、5年の保管期間を過ぎたコメを飼料用米などとして売却する「棚上げ備蓄」と呼ばれる保管方式について言及。その中で「棚上げ備蓄なので、あと1年たったら動物のえさ米になるようなもの。1年たったら動物のえさになるようなものを『安く売りますよ』と言っても、そりゃ、安く出ますよ」などと口にした。ある野党議員に話を聞くと「玉木さんが指摘した流れは事実だし、その場で問題視するような雰囲気はなかったのも事実」とした上で「発言もだが、それ以上にその後の対応がまずかった」と述べた。「備蓄米を待ち望む人がいる中で『えさ』と言うのは、発信力がある玉木さんとは思えないセンス。発言が炎上した後の危機管理対策も後手後手。持論を訴えるばかりで、炎上した背景に目が向いていなかった」と苦言を呈した。
玉木氏は「永田町のユーチューバー」を自任し、SNSの良さも怖さも分かっているはずだが、「農政の専門家」としての思いばかりが空回りする事態に。玉木氏の発言を本人に先だって陳謝したのは、5月30日に会見した榛葉賀津也幹事長だったが、こちらも当初は玉木氏の主張に理解を示しながら、記者から「まずは謝っては」と促され、おわびの言葉を口にした。玉木氏がX(旧ツイッター)におわびの言葉を記したのはこの後だった。
与党関係者は「誤解を招く形の発言になっていたのは分かっていたはず。あそこは攻め続けるのではなく、1度謝って、その上で持論を述べるべきだった。榛葉さんが謝った後で謝るのも、ちょっと間が悪かった」。攻めの姿勢が防御とならなかった典型、とも話していた。
同党をめぐっては、参院選の元国会議員擁立をめぐる分かりにくさでも、同様の対応がみられる。比例代表に元国会議員4人を擁立したが、特に、議員時代の不倫疑惑報道や皇位継承のあり方で党の姿勢と異なる意見を主張した山尾志桜里氏について、玉木氏の歯切れは悪いままだ。最近の玉木氏や榛葉氏の記者会見では、山尾氏に会見させるかどうか、という問いがよく出る。玉木氏はその必要性に触れながらも「山尾さんに伝えたい」と述べるだけで、進展はない。
5月14日の発表時、記者会見が開かれなかった元議員4人のうち、足立康史氏と薬師寺道代氏は地元で取材対応し、ワクチンに対するかつての発言に懸念が出るなどしていた須藤元気氏も5月28日、街頭演説の後で取材に応じた。過去にコロナワクチンについて見直すべきとしていた主張の真意を、かなり突っ込んでただされたが、「党と足並みをそろえ、理解を深めたい。今後は政治家として責任ある発信をしていく」と応じた。これで公の場で取材対応していないのは、山尾氏だけになっている。
山尾氏は公認発表当日に都内での街頭演説に姿をみせたが、「取材は会見ではなく個別対応で」と述べており、玉木氏らの働きかけが通じ、記者会見するのかは不透明なまま。まもなく参院選公示のタイミングまでほぼ1カ月だが、こうしたモヤモヤを抱えたまま、本番になだれ込む可能性もなくはない。この問題では守りに入りすぎるがゆえ、積極的に攻められないジレンマに陥っているように感じる。
先月30日の会見で、減速気味になりつつある党の支持率について問われた榛葉氏は「支持率うんぬんは結果論。一喜一憂することはない。かつては絶滅危惧政党と言われ(支持率が)四捨五入でゼロという時もあった。一喜一憂せずしっかり地に足をつけて頑張りたい」と淡々と語った。
まもなく始まる東京都議選やその後の参院選で、国民民主の動向が注目される状況には変わりはない。これまでの勢いを保つのか、それとも止まってしまうのか。そんな国民民主に今、求められているのは、これまで得意としてきた「刺さる」説明ではないか、と感じる。【中山知子】


