ダイドードリンコは10月4日、テレビアニメ『呪術廻戦』とコラボした缶コーヒーを発売した。「ダイドーブレンドコーヒーオリジナル」をはじめとする3商品のパッケージに、『呪術廻戦』に登場するキャラクターをデザインしている。販売期間は2022年春までの予定だ。


缶コーヒー「ダイドーブレンド」のアニメとのコラボ第2弾は『呪術廻戦』。「鬼滅缶」のヒットを再現できるか。(写真:東洋経済、(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会)
缶コーヒー「ダイドーブレンド」のアニメとのコラボ第2弾は『呪術廻戦』。「鬼滅缶」のヒットを再現できるか。(写真:東洋経済、(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会)

アニメ『呪術廻戦』の原作は、週刊少年ジャンプで連載中の漫画作品。高校生の主人公が呪いを駆使し、「呪霊」と呼ばれる呪いの化け物と闘うダークファンタジーだ。シリーズ累計発行部数は5500万部を超える(10月時点)。昨年10月にアニメ化され、今年12月には映画が公開される。今回のコラボ企画は、昨年末にダイドー社内の企画チームで提案され、決定されたという。


「鬼滅缶」は1億円超えのヒット

ダイドーはこれまでも清涼飲料水などで『名探偵コナン』など複数のアニメとのコラボ商品を発売してきた。だが、1975年の創業時から販売する看板商品の「ダイドーブレンド」で、パッケージデザインにアニメキャラクターをデザインするなど本格的なコラボを行ったのは、昨年が初めてだった。


その第1弾となったのがアニメ『鬼滅の刃』とのコラボ缶だ。2020年始めからアニメ、原作漫画がともに話題となる中、昨年10月に発売。劇場版アニメの公開時期と発売時期が重なったことが幸いし、発売から3週間で5000万本を売り上げた。現在までの販売本数は1億本を超え、文句なしの大ヒットとなった。



『呪術廻戦』コラボ缶コーヒーは20~30代の男性をターゲットとする(写真:東洋経済)
『呪術廻戦』コラボ缶コーヒーは20~30代の男性をターゲットとする(写真:東洋経済)

一般的に、缶コーヒーは原材料にかかるコストが低く、一定規模以上売れると利益が大きく伸びる「ドル箱」商品だ。「鬼滅缶」のヒットを受け、ダイドーグループホールディングス(HD)の2021年1月期の営業利益は、期初に見込んでいた23億円を大きく上回る56億円(前期比93.6%増)となった。


ダイドーグループHDの髙松富也社長は、「想定していなかった反響」としたうえで、40~50代がメインの愛飲者である缶コーヒーにおいて、これまで接点がなかった子どもや女性にもリーチできたことを評価。「コラボ効果が残っているうちに次の一手を打ちたい」と語っていた。


今回の「呪術廻戦缶」のターゲットは20~30代の男性だ。「自動販売機で缶コーヒーを買うのは年齢層が高めの男性のため、少しでも若年層に訴求したい」と、ダイドーグループHDの広報担当者は意気込みを語る。


だが今のところ、「鬼滅缶」のような好調な滑り出しにはなっていない。10月25日に同社が発表した10月の国内飲料販売状況によると、コーヒー飲料の販売量は前期比で15%の減少となった。販売チャネル別に内訳を見ると、自販機での販売量は前期比6%減、コンビニなど小売りでの販売量は約3割減となった。


同社はこの数字を「昨年の『鬼滅缶』効果の反動」(広報担当者)と説明する。昨年10月を振り返ると、コーヒー飲料の販売量は単月で前期比5割増だった。コロナ禍による自販機の利用者減少などを受けて2020年1~9月が前期比1割減で推移していたことを考えると、「鬼滅缶」発売初月の同年10月の数字がいかに桁違いであったかがわかる。


その点、ダイドーが期待するのは『呪術廻戦』の劇場版公開だ。「『鬼滅缶』は発売と映画公開の時期が重なったこともあり、一気に話題となって売れた後、徐々に落ち着いた。今回は12月に『呪術廻戦』の映画上映が予定されていることもあり、年末にかけての長期戦と見ている」(同)。つまり尻上がりの展開を期待しているわけだ。


自販機の台数増が追い風

「鬼滅缶」ブーム時とは異なる追い風も吹いている。ダイドーの自販機台数の増加だ。


コロナ禍で外出機会が減り、職場や屋外での自販機利用者数が減少したことを受け、多くの飲料メーカーは不採算の自販機を撤収した。飲料業界の専門誌を発行する飲料総研によれば、2020年の清涼飲料市場は前年比で7%減だったが、その中でも自販機による売り上げは15%減となった。自販機の稼働台数も、前年から7万台減少し223万台となった。


このような状況下でダイドーは、他社が自販機を撤去した場所に新たに設置するなど、攻めの姿勢を見せている。昨年秋からの1年間で、「1万台には届かないが数千台」(広報担当者)増えたという。


飲料総研のデータでは、ダイドーの自販機は2020年末時点で約24万台。2019年までの数年は減少傾向にあったが、2020年は増加に転じた。この台数増も「呪術廻戦缶」を後押しする。ダイドーが自販機を増やす大きな理由は、同社の売上高の約8割を自販機での販売が支えていることにある。コンビニなどと違って販促費のかからない自販機販売は利益率が高い。


さらにコーヒー飲料は、売り上げ、販売数量ともに国内飲料事業の半分を占める主軸の商品だ。近年はコンビニコーヒーの台頭などで苦戦しているが、自販機での缶コーヒー販売は同社の生命線だ。


アニメとのコラボで、缶コーヒーの支持層若返りを目指すダイドー。目下、来年にコラボを組むアニメを選定しているところだが、缶コーヒーで採用するかどうかは未定だという。「呪術廻戦缶」の売れ行きが今後の戦略を左右しそうだ。

【兵頭 輝夏 : 東洋経済 記者】