ギャンブル、薬物、アルコール、買い物、ゲーム。さまざまな依存症からの回復が題材の映画「アディクトを待ちながら」が6月に公開される。

俳優の高知東生ら実際に治療を受けてきた当事者や、家族たちが出演する。くしくも米大リーグ大谷翔平選手の元通訳の違法賭博問題が判明し、依存症に厳しい視線が注がれる。映画は「誰もが陥る可能性のある病気だ」と、治療や社会復帰につながりにくい現状が変わるよう訴える。

描かれるのは、偏見にさらされるアディクト(依存症者)や、苦悩しつつ支える家族や友人たち。「自分が自分のこと好きになれなかったからだろ。依存症になるってさ」「またお金借りるの? なんでまたうそつくの?」。それぞれが翻弄(ほんろう)されながら、回復の道を共に歩もうとする。

高知は2016年、覚醒剤取締法違反(所持、使用)などの罪で執行猶予付き有罪判決を受けた。その後は依存症からの回復へ自助グループに参加し、近年は違法薬物防止の啓発活動にも加わる。

映画復帰を果たす今作では、薬物事件で逮捕されたミュージシャン役で主演。自身の経験を重ねるようにさまざまな依存症者らと再起を期す。

厚生労働省の推計では、ギャンブル依存症の経験が疑われる人は300万人超、アルコールでも100万人超に上る。ただ、実際に治療を受ける患者は一握りだという。

ナカムラサヤカ監督は、親族がギャンブル依存症を経験。「依存症は“普通の人”でもなってしまう脳の病気であり、回復できると知っている人は少ない。私もそうだった」と振り返る。4年間、当事者らへ取材し、映画を撮った。「陥っても終わりではなく、大丈夫なんだと伝えたい。一人でも回復につながってほしい」と願う。

大谷選手の元通訳、水原一平容疑者はギャンブル依存症を明かしたとされ、選手の口座から胴元側に不正送金したとして米ロサンゼルスの連邦地検に訴追された。送金のため選手を装って銀行に電話したとされる。

今作でプロデューサーを務める公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(東京)の田中紀子代表は、うそをついてお金の工面などをすることは依存症に特有の症状だとした上で「必要なのは適切な治療だ」と指摘する。

依存症者へのバッシングや、逮捕された俳優の出演作品の放映中止など「排除の動きがあまりに強く、当事者が回復へ踏み出そうにも相談しづらい。国は自助グループが存在することの周知を徹底するべきだ」と強調する。

映画は6月29日~7月5日、東京・新宿のK's cinemaで公開。全国各地でも順次上映を予定する。(共同)