【ピッツバーグ共同】米鉄鋼大手USスチールは12日、臨時株主総会をオンラインで開き、日本製鉄による買収提案を賛成多数で承認した。買収手続きが一歩進んだ形だが、労働組合の反対や11月の米大統領選、米当局による反トラスト法(独占禁止法)の審査など、懸案は山積している。

日鉄の買収案は、株価を大幅に上回る買い取り価格を提示しており、当初から承認される公算が大きかった。賛成比率は発行済み株式総数の約71%に上った。

USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は承認後に「『世界をリードする能力を持つ最高の鉄鋼メーカー』として前進することに一歩近づいた」とコメント。日鉄は、競争力のある製品やサービスで米国の優位性を高めるとともに、中国に対する経済安全保障を強化するとアピールした。

一方、全米鉄鋼労働組合(USW)は買収が「株主や経営陣だけの問題ではない」と改めて反対を表明。民主、共和両党の議員や米大統領らを挙げて「みんな懸念を表明している」とけん制した。11月の大統領選で再選を目指すバイデン大統領と返り咲きを狙うトランプ前大統領はいずれも労組寄りの姿勢を示している。

日鉄は昨年12月、USスチールを約2兆円で買収すると発表した。日鉄による買収提案の議決では、USスチールの経営陣や米議決権行使助言会社のグラスルイスが株主に賛成を推奨。USスチールの大株主で、米投資会社のペントウオーター・キャピタル・マネジメントも支持を表明した。(共同)