衆院3補欠選挙(16日告示、28日投開票)の1つである東京15区補選の対応を巡り、自民党の迷走ぶりが目立っている。

派閥の政治資金パーティー裏金事件の逆風を受け独自候補擁立は困難と判断し、東京都の小池百合子知事が推す作家の乙武洋匡氏に相乗りし推薦する方向で動いたが、当の乙武氏に袖にされ見送り。思惑が完全に外れた形だ。一方の野党も足並みはそろわず、選挙情勢は混沌(こんとん)としている。

「地元の意向があった」。自民の茂木敏充幹事長は13日、訪問先の那覇市で記者団に対し、乙武氏推薦見送りの経緯をこう説明した。

茂木氏が乙武氏への推薦方針を示したのは2日。小池氏側から公明党も相乗りするとの感触を伝えられていたためとみられる。だが公明は支持母体・創価学会内で過去に報じられた乙武氏の女性問題への抵抗感が強く、静観。乙武氏からも「(自民推薦は)逆風になる」などの発言が飛び出し、推薦見送りを余儀なくされた。小池氏側に「はしごを外された」(関係者)格好だ。

島根1区、長崎3区を含む3補選は、岸田政権の命運を左右する政治決戦となる。東京15区での自民の乙武氏相乗り案は、独自候補擁立断念という汚名を少しでも薄めるための苦肉の策でもあった。自民筋は「もうぐちゃぐちゃ。東京15区は魔の選挙区だ」と嘆く。

ただ自民内には、乙武氏当選には自公の組織票が必要になるとの見方もある。選対筋は「乙武氏推薦を見送っただけで、自主投票と決めていない」とした上で「最終盤で同氏を後押しする展開もある」と踏む。現時点で行き場がない自民、公明支持票が鍵を握るとの見立ても明かした。

小池、乙武両氏は13日、共に演説。知名度を武器に浮動票獲得に照準を合わせる。小池氏は「本人は五体不満足だが、有権者には満足できる人材だ」とアピールした。

一方の野党。立憲民主党の泉健太代表は、出馬する元区議の酒井菜摘氏の応援に駆け付けた。記者団に「(乙武氏は)与党なのか野党なのか有権者にどう説明するのか」と語った。乙武氏への揺さぶりを狙った発言だ。

日本維新の会は元会社員の金沢結衣氏を擁立。国民民主党は乙武氏推薦を決めており、ばらばら感は否めない。立民筋は「政権批判票をどこが取り込むか、読みにくい戦いになる」と予測した。(共同)