イランが敵対するイスラエルへの報復攻撃に踏み切り、上昇基調にある原油相場がさらに上振れする可能性が出てきた。産油国が集中する中東地域の原油輸送網が混乱する恐れがあるためだ。欧米先進国では、沈静化してきた物価高が再燃するリスクがある。

ニューヨークの原油先物相場は、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した昨年10月に1バレル=90ドル台を記録した。イランが原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖すれば、供給不安が生じると警戒されたことが一因だ。

その後は下落に転じ、今年1月初旬に一時70ドルを下回った。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で商船攻撃を繰り返したことから上昇する局面も見られたが、イランがイスラエルへの直接攻撃を控え周辺国に戦線が大きく拡大しなかったことが影響した。

こうした中でイスラエルが今月1日にシリアのイラン大使館を攻撃し、イランが報復を宣言。先週末12日のニューヨーク原油先物相場は一時1バレル=87ドル台と、昨年10月以来の高値を付けた。

イランの攻撃は原油相場だけでなく、世界経済と各国の金融政策に影響を与えるとみられる。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は11日、インフレ鈍化を踏まえ将来の利下げを示唆する一方、中東情勢をリスク要因に挙げ「エネルギー価格と物流コストを押し上げ、世界貿易を混乱させる可能性がある」と警戒感を示した。(ロンドン共同)