交流サイト(SNS)への投稿などで事件遺族を傷つけたことを理由に、国会議員で組織される弾劾裁判所から罷免判決を受けた元仙台高裁判事の岡口基一氏(58)が15日までに共同通信のインタビューに応じ、遺族に「傷つける意図はなかったが、十分配慮すべきだった。申し訳なかった」と改めて謝罪した。弾劾裁判に対しては「議員が本格的な事件を裁ける制度になっていない」と疑問を呈した。

3日の罷免後、取材に応じるのは初めて。過去の弾劾裁判は刑事事件や重大な職務違反が問われたものだったが、今回は裁判官による表現行為の是非が争われた初のケースだった。

衆参両院議員で構成する裁判官訴追委員会は、2015年に起きた女子高校生殺害事件に関する投稿など計13件の表現行為を理由に訴追した。

裁判官弾劾法は、3年以上前の行為を理由とした訴追はできないと定めている。表現行為の一部はこの「訴追期間」を過ぎていたが、判決は「表現行為には一体性があり、訴追期間を過ぎていない」と認定した。岡口氏は「これでは訴追期間の意味がない。期間内に訴追しなかった訴追委のミスを、同じく議員で構成される弾劾裁判所がかばった」と指摘した。

また判決は、岡口氏の表現行為で女子高校生の遺族が繰り返し傷つけられたことを罷免の理由としたが「誰かが傷ついたという理由だけで表現を非難するのは、表現の自由の観点からあり得ない」と反論。「司法の独立が脅かされる」とも述べた。

仙台高裁判事を最後に職を追われたことには「原発事故訴訟などにきちんと取り組みたかった」と心残りを口にする一方、弾劾裁判で沈黙を続けた最高裁に対しては「見捨てられたように感じる」と恨み節も漏れた。

5年後には法曹資格の回復を申し立てることもできるが「次世代の法曹の育成に貢献したい」と当面、司法試験指導校で講師をしながら、法律書の執筆や講演活動に取り組むとしている。(共同)