伊藤信太郎環境相は16日の閣議後記者会見で、2023年度に過去最多の人的被害をもたらしたクマを「指定管理鳥獣」に追加したと発表した。絶滅の危機が高い四国のツキノワグマは除く。都道府県による捕獲や生息状況の調査事業が国の交付金の対象となる。伊藤氏は支給時期について「今秋のクマの出没に間に合うように準備を進めたい」と説明した。

環境省の専門家検討会が2月、クマを指定する方針案を決定。既に指定されているニホンジカやイノシシと比べると、クマは繁殖力が低く、異なる支援メニューが必要と指摘。適度な捕獲や出没対策を組み合わせた被害防止策強化を提言した。

環境省によると、ヒグマとツキノワグマは34都道府県に分布。うち四国以外では分布が拡大し、推計個体数も多くの地域で増加傾向を示している。23年度のクマによる人的被害は、19道府県の計198件で、死者6人を含む219人(速報値)。いずれも統計がある06年度以降で最多となった。

被害が多発し、北海道、東北6県、新潟県による「北海道東北地方知事会」が23年11月、指定管理鳥獣への追加を伊藤氏に要請していた。

追加を受け、秋田県の佐竹敬久知事は「人とクマのあつれきの低減に向けた取り組みが強化できる」とコメント。北海道の鈴木直道知事は国に対し「地域の実情を踏まえた支援を」と求めた。

一方、追加に反対する1万4749筆の署名を今年2月に環境省に提出した一般財団法人日本熊森協会(兵庫県)の室谷悠子会長は「捕殺ありきではなく、人とクマとのすみ分けができるような対策に力を入れてほしい」とした。(共同)