北海道・知床沖で2022年、観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没し乗客乗員26人が死亡、行方不明となった事故は23日、発生から2年となった。刑事事件捜査は継続中で、地元住民は「事故はまだ終わっていない」と話す一方、風化を危ぶむ声も聞かれた。斜里町などは同日午後、出港地のウトロ地区で追悼式を開いた。

乗客14人の家族計約30人は損害賠償を求め、5月下旬以降、運航会社と社長を相手取り、札幌地裁に提訴する。

ウトロは曇り空に時折晴れ間ものぞくが、正午の気温は3度ほど。波が高く、出港を見合わせる漁船もあった。事故直後の捜索に参加した漁師今井卓さん(55)は「要請があればまた手伝う。観光客数は戻りつつあるが、日本人は少ない。イメージは回復できていない」と話した。

別の40代の漁師は「2年間はあっという間だった。1年後までは海に浮いている物があれば事故に関係があるのではないかと考えたが、最近はそう考えることも少なくなった」と打ち明けた。

札幌市手稲区の小田原真理子さん(54)は見つかっていない6人に向け「みんな捜している。忘れてないよ」との思いで港に花を流した。

知床小型観光船協議会の会長で「ゴジラ岩観光」の神尾昇勝統括部長は「私たちにとっては2年の区切りは関係ない。安全運航を続け、信頼を得るしかない」と話した。ただ別の1社は採算が取れず、3月末で観光船事業を廃業した。

事故は22年4月23日午後、知床半島西側の観光名所「カシュニの滝」沖で発生。運輸安全委員会は昨年9月公表の報告書で、船体の不具合が原因だったと指摘した。第1管区海上保安本部(小樽)が運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(60)らを業務上過失致死の疑いで捜査している。(共同)