岸田文雄首相は3日午前(日本時間同日夜)、ブラジルの首都ブラジリアでルラ大統領と会談した。両国で脱炭素社会実現を主導する新たな協力枠組みの設置で合意。中国やロシアをにらみ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けた連携を確認した。両首脳は成果を盛り込んだ共同声明を発表した。

ブラジルは今年の20カ国・地域(G20)議長国で、2025年には国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を開催する。首相は「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の筆頭格ブラジルと関係を深めたい意向だ。

首相は会談後の共同記者発表で、新たな協力枠組みに触れ「世界のカーボンニュートラル実現に貢献する」と強調。ルラ氏は、クリーンエネルギー分野への投資を呼びかけた。

会談では、日本のハイブリッド技術とブラジルのバイオ燃料を組み合わせて脱炭素への動きをリードする考えで一致。具体的な取り組みを進めるため、次官級対話の創設で合意した。首相はブラジル北部アマゾン地域の森林保護への協力を伝達。両国は気候変動対策に関する「グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ」の立ち上げを決めた。

経済面では、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化の重要性を共有。ブラジルが加盟する南米の関税同盟、南部共同市場(メルコスル)との関係強化や、ブラジルの農地改良への協力を打ち出した。

この他、防衛やサイバーセキュリティーでの連携で合意。国連安全保障理事会改革に向けた協調を確認した。ウクライナや中東情勢で懸念を表明。25年の日ブラジル外交関係樹立130周年を見据え、人的交流の促進を申し合わせた。首相はルラ氏を日本に招待した。

首相は3日午後、政府専用機でブラジルからパラグアイに到着した。(共同)