伊豆諸島の鳥島東方海域で海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が墜落した事故で、2機が無線を通じて機体の位置情報などを共有できる「僚機間リンク」と呼ばれるシステムに接続していなかったことから、それぞれが訓練の中で別の任務を担っていた可能性があることが23日、関係者への取材で分かった。海自は2機が空中衝突したとみており、フライトレコーダー(飛行記録装置)のデータ解析を進め、墜落の経緯を詳しく調べている。

海自トップの酒井良海上幕僚長は23日の記者会見で、公表済みの2機の機長を含め、全搭乗者8人の氏名などを明らかにした。死亡したのは大村航空基地(長崎県)所属機の副操縦士西畑友貴2等海尉。残る7人は依然行方不明で、酒井氏は「引き続き全力で捜索救難活動に取り組む」と述べた。

海自によると、20日深夜に起きた事故は、海中の潜水艦を探知する対潜水艦戦(対潜戦)の訓練中だった。対潜戦でSH60Kは、音波を発信して反響音を調べるソナーを海中につり下げるほか、磁気探知装置を使ったり、スクリュー音を集めて無線で送信するソノブイを投下したりする任務に当たる。

僚機間リンクは、対潜戦に加わるヘリが探知した情報などを無線で交換するネットワーク構築のシステム。接続した機体同士の間隔が狭まると、警報が鳴る機能を備える。別任務だと接続しないケースもあるという。酒井氏も会見で「接続するかどうかはミッションによりけりだ」と述べた。

機内には、自機のレーダーで探知した周囲の航空機の位置や速度などの情報を映し出す画面もある。僚機間リンクに接続していなくても、通常は搭乗者の目視による見張りやレーダーでの監視を組み合わせて周囲の航空機の状況を把握することになっており、警報は補完的な位置付けだとしている。(共同)