埼玉県朝霞市で中学生だった少女(15)が誘拐され2年ぶりに保護された事件で、未成年者誘拐と監禁致傷などの罪に問われた寺内樺風(かぶ)被告(24)の第2回公判が2日、さいたま地裁(松原里美裁判長)で開かれ、寺内被告が、被害者に謝罪の言葉を口にした。ただ、事件については「残念ながら」「結果的に事件を起こした」などと人ごとのような供述を繰り返した。被害者の母が証人尋問に出廷し「一生刑務所から出さないでほしい」と訴えた。

 寺内被告は黒いスーツ姿で、薄ら笑いを浮かべて入廷した。被害者の母親を囲むパーテーションを眺め、首をかしげたり、眉をひそめたり。弁護側の被告人質問に雄弁に答え続けた。

 最後に弁護人から促されてようやく、座ったまま回転椅子をクルリとパーテーションの方に向けて「まったく行う必要のなかった行為を、私の身勝手な理由で起こしてしまって、本当に申し訳なく思っています」と上体を倒してみせた。

 弁護側の被告人質問では、解説者のような口調で語った。中3でいじめに遭い、クラス全体から疎外されているように感じたと説明。いじめの加害者が処分されず「表面化しなければ何をしてもいいと考えるようになった」と話した。事件を起こした理由を「社会性を培う機会がなく人の気持ちを理解する力が退化し、結果的に本事件を起こしたのが経緯」とした。

 検察側は、寺内被告が逮捕後の調べで少女を「被験者」と呼んでいたと指摘。その理由を被告は「人間ではなく動物というか、生物と接しているような感覚だった」などと説明した。

 被害者の家族が心配する気持ちについては「よく分からないですね」と供述。弁護人は逮捕後、寺内被告が自分の性格分析を記したメモを取り上げ「三人称の視点で生きている」との記述について質問。同被告は「自分の目で物を見ても、その出来事がパソコン動画のように現実感がない」と説明。

 検察側は、被害者側からの損害賠償命令についても質問。寺内被告は「できる限り払っていく」としたが、現在の貯金20万円については「携帯代の支払いに使う」とした。

 弁護側証人尋問で出廷した寺内被告の父親は「(逮捕後の診察で)精神疾患を患っている可能性があると聞いた」と証言。弁護人に促されて突然涙声になり、被害者側に向かって「申し訳ありません」と謝罪した。一方、検察側は父親も損害賠償の申し出をしていないことを指摘。弁済ができない被告への援助の意向も質問したが、父親は「考えていない」とした。

 次回公判は、寺内被告の精神鑑定が行われた後で開かれる。