昨年7月、岩手県大槌町に住む小松倫子ちゃん(9)の一家が、念願だった2階建てマイホームを町内に建てた。震災から6年、日刊スポーツは倫子ちゃんの成長を追い掛け、家族の再建への道のりを毎年伝えてきた。このほど、初めて新居を訪れて、倫子ちゃんに部屋を案内された。3歳だった女の子は4月から小4に進級する。家族の愛情をたっぷりと受けて、料理好きなスポーツ少女に育った。

 2階の突き当たりが倫子ちゃんの部屋。案内されて入ると、学習机やベッドは小3の女の子らしいキャラクターグッズなどが置かれ、明るく彩られていた。別室に飾っている巨大なジグソーパズル(縦55センチ×横78センチ)は9歳の誕生日プレゼント。わずか1カ月で完成させた。「図工が好きだから。特にパズルが大好き!」と説明してくれた。

 小学校入学と同時に始めた空手は昨年の昇級試験で5級に。待望の色帯だ。母広子さん(37)は「度胸があって負けん気も強いから、大きな相手でも正面からいって負けちゃう。東京五輪に出場? それは無理ですね(笑い)」。

 両親が多忙で、父方の祖父母に育児の協力を依頼している。祖母の小松八重子さん(66)は「うちに来るとホットケーキやたこ焼きを作ったりするんです。倫子の『マイ包丁』も置いてあって、夕食でカレーライスを作る時はニンジンなどを切ってくれる。私が手伝おうとすると『うちがやっから手を付けないで!』と言われちゃうんです」と成長ぶりに目を細めた。

 ただ、気になることもあるという。八重子さんの友人が訪れ、震災の話をするとスッと隣の部屋に消えていく。余震を怖がり、防災訓練のサイレン音にも神経をとがらせる。あの日の記憶は幼心にも残っている。

 倫子ちゃんに将来の夢を聞くと「肩をもむ人」と返ってきた。理由は「ママがいつも肩がこっているからマッサージをしてあげたい」。倫子という名前は「まっすぐに人の道を外れないように」と広子さんが付けた。名前の通りにスクスクと育っている。【松本久】