豊洲市場の移転問題を検証する都議会の調査特別委員会(百条委員会)で20日、石原慎太郎元都知事(84)の証人喚問が行われた。

 次に公明党の野上純子都議が質疑に臨んだ

 -2011年3月31日に、東京都と東京ガスが結んだ土地売買契約では、東京ガス側が78億円の土壌汚染対策費を負担する代わりに、新たな汚染が見つかっても、東京都は追加負担を求めない…いわゆる瑕疵(かし)担保責任を免除する取り決めがあった。石原証人は記憶にないなどとおっしゃっているが、当時の交渉記録を見ると、市場当局が石原証人に「東京ガスに80億円負担してもらう」と説明したのは確実な事実。岡田元市場長も18日の証人喚問の中で「11年3月22日に、知事に交渉結果を説明した資料が残っている」と証言した。瑕疵(かし)担保責任を免除は了解していたのか?

 石原氏 瑕疵(かし)留保の留保について初めて知ったのは昨年ですね、私から顧問団を含めて聴聞したいという意思がありましてね。ですから私は、過去のことを詳しく答えられないかもしれないから、文書として質問事項を整理していただきたいと言った。そこで初めて、あの契約の中に瑕疵(かし)責任の留保があったということを知った次第です。その頃の報告は当時、東日本大震災で日本中が混乱し、東京の持っている防災(の人員)を、福島第1原発対処のために動員してほしいと菅内閣から要請があった。大混乱の中にありまして、私はいろいろな報告、質問、相談があったものですから、担当から報告を受けた記憶はございません。

 -記憶がない…これ以上無責任なことはないと思う。豊洲市場の建物地下に盛り土がなかったことについて。石原証人は、3月の会見でも記憶がない、報告を受けていないなどと言った。盛り土しないのは、証人の肝いりで設置された専門家会議、技術会議があり、その方々の提言を無視したということになる。毎週金曜に副知事らとランチミーティングを開いていたというが、そこで決めたのか?

 石原氏 それは違います。私は盛り土などするより、ある人のサジェッションで、地下に駐車場を含めた3階建ての施設を作った方が、ユーティリティーも高いし、いいんじゃないかと案を出したが一笑に付された。小池知事の時代になって発覚したが、関係者数人の役人が無断で盛り土しなかったわけでしょ? これが事実では?

 -現場レベルでなく、知事の判断で決めるべきことではないか。浜渦元副知事と東京ガスとの水面下交渉について質問します。交渉を指示したのは石原元知事、あなたです。浜渦元副知事から、東京ガスとの交渉でどういう報告を受けた?

 石原氏 彼に一任したことなので、詳細な報告は受けておりません。存じておりません。報告は聞いておりません。

 -水面下交渉というのは、都が政治的圧力で土地の売却を迫るムチを振るう一方で、486億円の護岸工事などの土地開発費を都が肩代わりする。汚染が一部、残っていいとする計画…アメを残し、アメとムチで交渉をまとめた。土壌汚染対策も都が858億円の費用を負担することになった。最高責任者である当時の知事が、ただ単に部下に任せるのではなく、必要な責任を求め、的確に指示すべきではなかったか? なすべきことをしなかった不作為責任では?

 石原氏 行政というのは、1人の人間が仕切ってできるものではない。都庁のような大きな大きな組織では、いろいろな問題があって、ものによっては一任せざるを得ない。向こうは売りたくない、こちらは買いたくてしょうがないという複雑な交渉を、浜渦を信頼して任せた。プロセスに立ち入って私が采配する問題はない。その能力もありませんし。私が立ち入って、いちいち細かい問題にせんさくする見識もない。

 -最後の結論は受けて判断するべきでは?

 石原氏 そのために審議会があったのではないか? 審議をして、是として上がってきたものだから、私はそれを受けざるを得ませんよ。

 -最終判断をするのは知事

 石原氏 だから私は最終的に判断したんです。

 それが大きな結果を残したと申し伝えて終わります。

 石原元都知事は終盤、怒りやいら立ちをあらわにした。議事の進行上、20分の休廷に入った。【村上幸将】