カピバラ人気が続いている。癒やし系動物としてCMなどに引っ張りだこで、キャラクターグッズも続々と発売されている。南米にすむネズミの仲間で、1960年代に日本に初めて輸入された。愛らしい風貌、おっとりとしたしぐさなどが人気を呼び、飼育している施設は全国で100を超えたという。日本でのカピバラ飼育の草分けである伊豆シャボテン動物公園を訪ねた。

 伊豆シャボテン動物公園の「カピバラ虹の広場」では、8匹が放し飼いにされている。お父さんケビン、お母さんニンジン(ともに4歳)を中心にしたファミリーで、昨年12月に生まれた赤ちゃん2匹もいる。

 ここではエサやりもOKで、草を手にするとケビンを先頭にファミリーがのそのそと歩いてくる。背中を触るとゴロンと横になり、丸いおなかを見せる。そっとなでると、キュルキュルと小さな声を出した。

 副園長の竹田正裕さん(42)は「本当に人懐こくて、どこを触られても嫌がりません。気分がいいときはキュルキュルと鳴くんですよ。めったにありませんが、怒ったときはフンフンと声を出します」と教えてくれた。

 南米のアマゾン川流域などにすむカピバラは、1960年代後半に初めて日本に来た。実は東京の大学が食用の研究のために輸入。その一部が伊豆シャボテン動物公園に預けられ、飼育がスタートしたという。

 人気が高まったのは00年代に入ってから。クレーンゲームの景品として開発されたキャラクター「カピバラさん」が大ヒット。その後、ぬいぐるみや写真集などが続々と発売され、CMにも頻繁に登場するようになった。「この10年ぐらいで(日本の)カピバラは爆発的に増え、飼育している施設は現在100カ所を超えています」(竹田さん)。

 プールで泳ぐカピバラの姿も楽しい。お父さんがプールに入ると、子供たちも一斉に飛び込み、水しぶきが上がる。スイスイと気持ちよさそうに泳ぎ、時折水中から愛らしい顔を出す。水が大好きで、夏場は1日の半分程度を水の中で過ごすという。トイレも水の中でする。

 「おっとりしていますが、意外と活発な面もあるんです。走るスピードは最大で時速45キロほど。人間の全力疾走と同じくらいです。知らない同士が初めて会うと、歯をカチカチ鳴らして互いに威嚇するんですよ」と竹田さん。

 昼寝をしたり、プールで遊んだり、見ているだけで癒やされるカピバラ。おなかをなでたときのキュルキュルという鳴き声は本当にかわいい。もしも人生に疲れたら、キュルキュルを聞きに動物園に行こうかな。【田口辰男】

 ◆カピバラ 和名は鬼天竺鼠(オニテンジクネズミ)。ネズミの仲間としては現存する最大種で、体長1メートル以上、体重は50~60キロにもなる。南米の川や湖、沼などに生息。前足は指が4本、後ろ足は指が3本で、指の間に水かきがある。体毛は硬くゴワゴワしている。しっぽはない。ネズミらしく前歯は硬く大きい。草食で、オスのリーダーを中心に群れで行動する。寿命は5~10歳。