千葉市中央区にある千葉港が大きく様変わりした。工業港のイメージから脱却し、湾内周遊や工場夜景のクルージング船が就航している。昨年春には同港としては初めてとなる旅客船の桟橋ができ、ターミナルも開業した。千葉市は新たな「みなとまち」としてイベントを企画したり、観光で売り出し、にぎわいを演出しようとしている。

 千葉港が、横浜・山下公園のような散策や憩いの場所になっていた。ベンチがあり、遠く東京湾まで眺められる。複合施設「ケーズハーバー」が新たに建設され、桟橋に観光船「あるめりあ」と「シャイニービュー」が係留されている。

 以前はJR京葉線「千葉みなと」駅から海に向かうと、5分ほどで飼料会社のサイロや造船所、物流倉庫、工場の煙突、停泊する貨物船しか目に入らなかった。ここで観光するというイメージは全くなかった。この変わりようは何?

 千葉市海辺活性化推進課では、「東京五輪が開催された1964年(昭39)、この港の周囲は工場用地として埋め立てられた。93年からJR千葉駅周辺の商業施設を港に分散する計画だった」と説明する。ところが、バブル崩壊で計画が長引いた。ようやく、ケーズハーバーという形で商業施設と旅客船ターミナルが入り、昨年4月に港開きとなったという。

 もともと、千葉市内には42キロもの海岸線がある。JR総武本線の東京~千葉間(約39キロ)より少し長い。幕張の浜はイベントなどでにぎわう。検見川浜はウインドサーフィンなどが楽しめる。昭和の時代には、稲毛なども海水浴客でにぎわっていた。

 県内を見渡しても海の観光資源は各地にある。浦安市の東京ディズニーリゾート、習志野市の谷津干潟(やつひがた)、船橋市の三番瀬、木更津市の潮干狩り、内房~外房にかけては釣り、ダイビング、サーフィンなどが楽しめる。同市観光プロモーション課は、「千葉港だけは経済的には重要でも、港を周遊するなどの観光の要素には欠けていた」と話す。

 新たな目玉として、工場夜景のクルージングも加わった。昨年12月、日本工場夜景サミットに参加し、千葉市が日本八大工場夜景の仲間入りも果たした。

 関東の港で観光といえば、横浜といういいお手本がある。「東京から近くて遠いというイメージを変えたい」(同市観光プロモーション課)。伊豆諸島への直航便も含め、3年後までにいろいろと整備する。千葉港の観光事業は今、始まったばかりだ。【赤塚辰浩】

 ◆千葉港 千葉県市川市から袖ケ浦市まで、全長133キロにわたる日本一広い港。扱う貨物の量は全国2位。貿易額は成田空港、東京港、名古屋港、横浜港などに次いで8位。石油や液化ガスなどエネルギー資源の輸入、石油製品や有機化合物、鉄鋼の輸出が多い。県庁所在地である千葉市の港内には「千葉ポートタワー」があり、地上113メートルから東京湾が一望できる。

 ◆日本八大工場夜景 2011年(平23)2月、神奈川県川崎市で「第1回全国工場夜景サミット」を開催。工場夜景観光で地域活性化を図ろうと、京浜工業地帯の中心である川崎市、鉄で栄えた北海道室蘭市と福岡県北九州市、日本初の石油化学コンビナートが形成された三重県四日市市が組んで、「日本四大工場夜景」を宣言した。12年にセメントで有名な山口県周南市、14年に阪神工業地帯を支える兵庫県尼崎市、16年に製紙業が盛んな静岡県富士市が参加。昨年12月の第7回サミットで千葉市が加わり、「日本八大工場夜景」として共同宣言した。