モンテッソーリ教育はイタリアの女性医師マリア・モンテッソーリが20世紀初頭に確立した。国内第一人者の滋賀大教育学部元教授の相良敦子さん(79)によれば「ハートバッグを作るときには色紙の組み合わせを考えて分けたり、合わせたり、比べたりします。指先を動かしながら脳を使います」。子どもは自分から「やりたい」という出発点があれば、何度も繰り返し、黙々と何時間も集中するという。

 藤井の場合も「できたという達成感を得て、また別の色の1枚、もう1枚と何時間も集中していたのでしょう。集中した後は自立のレベルが高くなっていきます」と相良さん。興味の対象が移っても、培われた集中力は発揮される。4歳のときには立体迷路のスイスの木製おもちゃ「キュボロ」、5歳の夏からは将棋に夢中になった。

 モンテッソーリ教育を受けた子どもたちを追跡調査した相良さんは藤井の戦いぶりを注意深く観察している。「あの集中力と直感力。追い詰められたときでも状況を見渡し、臨機応変に対応する力。調査した子どもたちと共通する特徴が多いですね」。

 幼児期にモンテッソーリ教育を受けた人の中からは、米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏、アマゾンの創設者ジェフ・ベゾス氏らユニークな人々が生まれている。ITの世界で天才と呼ばれる彼らは世界に革命的な変化をもたらした。デビューから無敗で新記録を達成した14歳。将棋界の未来を「天才」が背負っている。【松浦隆司】

 ◆モンテッソーリ教育 イタリアの教育家で医師だったマリア・モンテッソーリ(1870~1952年)が提唱した教育法。0歳から6歳の間を感覚や運動、言語などを身につける重要な時期と位置付ける。独自の教材や子どもの発達段階に合わせた作業を通じ、自主性、協調性を養う。欧米では多くの実践例があり、日本でも取り入れる幼稚園が増えている。