印刷業者への架空発注で政務活動費(政活費)を申請した疑いが浮上している神戸市の橋本健市議(37)の辞職願が29日、受理された。同日、北川道夫議長(64)宛てに郵送で提出していた。

 辞職願はこの日午前、速達郵便で届けられ、自民党市議団の安達和彦団長(63)が本人確認。同午後3時に市議会各会派の代表者会議が開かれ、その席上で受理が確認された。

 会議後、取材に応じた北川議長は、辞職願には「一身上の都合により、辞職したい」と記載されたのみで、疑惑への言及はなかったと説明。署名と日付だけ自筆で「(文章は電子機器で制作したとみられる)ワードでした」と明かした。

 市議会ではこれまでも、辞職願が郵送された前例はあるものの、今年に入って政活費の不正流用で辞表を提出した市議3人は、議長のもとへ辞職願を持参している。ましてや今回は、郵便物の本人確認のため、北川議長や市会事務局が橋本氏の携帯電話に連絡したが、連絡はつかず。自民の安達団長からの着信にのみ応じる状態だった。

 これらのことから、北川議長は「本来なら(辞職願は)直接、私に渡すべき」と不快感を示し、電話が通じない理由には「(体調不良など)詳細は分からない」と答えた。

 現状では、安達団長以外は、“音信不通”のままでの辞職。橋本氏は説明責任を果たすこともなく、経営する歯医者にも先週末から姿を見せていない。

 これについて、北川議長は「こういった(事件の経緯は)辞職には値するが、辞職すればそれで済む問題ではない。辞表は早く出すべきで、タイミング的に(本人から話を)聞けなかった。ただ、議員の立場は離れても、説明責任を早急に果たすよう求めることは続けていく」とした。

 その一方で、疑惑究明への調査は「安達団長しか連絡がとれない」ことから、自民市議団に、まずは任せたいといい、代表者会議では、刑事告訴する議論も出ていないという。

 議長自らが疑惑調査に当たるべきではないか、との質問も上がったが「まずは本人と(アクセス)することが順番の第一。私も連絡を取る努力はしている。自民と同時並行で、本人の説明を受けたい」と語った。

 今後については、9月6日の市議会本会議後に代表者会議を開き、疑惑の調査報告を予定している。

 またこの日、橋本氏と直接、連絡を取れている唯一の自民・安達団長は「(橋本氏は)憔悴(しょうすい)はしている」と話した。ただ、電話に出られないほど体調が悪化しているか、もしくはすでに入院治療に入っているか、などの質問には「それはない」と答えた。居場所については「それはどこにいるか定かではない」とした。

 また、同じ自民のある市議は、辞職へ向かった一連の橋本氏の行動や、今後の疑惑調査について「静かな環境で、騒がしくない状態でないと、彼も出てきにくい」とだけ語り「これ以上、何も言うなと言われている」と質問をさえぎった。