東日本大震災で大きな被害を受けた福島第1原発から約10キロ離れた富岡漁港を本部とした釣り大会が30日、地元だけではなく関東地区も含め釣り人20人が参加して実施された。

 同漁港から漁船も含めて、出漁するのは震災以降6年半ぶりになる。

 富岡漁協は第1原発と第2原発に挟まれた立地。同漁港に所属する「長栄丸」「正栄丸」の2隻に20人が分乗して、第1原発から約10キロの海域でルアー・フィッシングの「ジギング」でヒラメを狙った。「富岡復港釣り大会」と銘打って行われた。

 釣り開始から約30分でほとんどの参加者がヒラメを釣り上げることができた。試験操業以外では漁や釣りはしておらず、この6年半の間、海は人の手が入っていなかった。

 長栄丸の石井宏和船長(40)は70センチ以上のヒラメが次々にヒットして、釣り上がっていく様子を見て「海はそのままにしておくと、こんなに魚を大きくするんですね。震災前のヒラメは平均50センチだった。このヒラメをもっと多くの釣り人に知らせたい」と唇をかんだ。

 現在、富岡漁港の所属の漁船は、約20キロ南側に離れた久ノ浜(ひさのはま)漁港に長栄丸を含め6隻が船を停泊させていて、この大会開催で一時的に母港に戻ることができた。

 放射性物質の残留値も、週2回ペースの試験操業で、毎回計測され、別に県のモニタリング調査も週1回で行われている。現状では、ヒラメだけではなく約150種の魚すべて数値が計測できないぐらいに低い結果が出ている。大会に参加した1人は「テレビでしか見ることのできなかった第1原発を目の前にして釣りをするのは不思議な感覚」と話しながら「でも、数値は大丈夫なんでしょ? もちろん食べますよ」と笑っていた。

 大会で釣れた魚は、表彰式で献体され、残留値が計測される。