ノーベル文学賞が5日、スウェーデンアカデミーから発表され、「わたしを離さないで」「日の名残り」などの作品で知られる長崎市生まれの日系英国人カズオ・イシグロ氏(62)が受賞した。06年にノーベル賞の登竜門といわれるチェコの文学賞「フランツ・カフカ賞」を受賞して以来、毎年候補に挙がる村上春樹氏(68)は受賞を逃した。

 イシグロ氏は1954年11月8日、長崎市生まれ。両親とも日本人で、5歳で渡英。英国で育ち、作家としては82年、「女たちの遠い夏」でデビュー。89年、「日の名残り」でブッカー賞を受賞した。「わたしを離さないで」と「日の名残り」は映画化されている。ノーベル文学賞の賞金は900万クローナ(約1億2500万円)。授賞式は12月20日にストックホルムで行われる。

 村上氏は今年も英大手ブックメーカー、ラドブロークスの予想オッズは5倍で、2番人気だった(1位は現代アフリカ文学を代表するケニア出身のグギ・ワ・ジオンゴ氏の4倍)。15年はベラルーシの女性ジャーナリスト、アレクエーシビッチ氏、昨年は米歌手ボブ・ディラン氏と、文学の枠にとらわれない選考が続いていた。アジア圏の受賞者は12年の莫言氏(中国)を最後に4年間出ていないことから、今年は期待が高まっていた。