市場移転問題において東京都の小池百合子知事が出した「築地は守る」との基本方針の具現化へ向けて設置された「築地再開発検討会議」が12日、都庁で行われた。小池氏は冒頭のあいさつだけ出席し、衆院選の遊説のため、わずか約7分で退席した。

 小池氏は「築地は日本の新たな中核市場としての可能性を持っているのと、都心に近く、さまざまなポテンシャルを持っている。自由な発想で、再開発の意見をどんどん出していただき、コンセプトのルーツにしてほしい」と述べた。

 近藤誠一元文化庁長官が座長に任命され「久々に夢のある話。都民の夢を実現する大きなプロジェクトとしてやっていく」と意気込んだ。また、「日本の食文化は食材、調理の仕方、器、部屋のたたずまいなど季節感、自然への思いがあり、毎日繰り返されている。再開発でできる施設や場は日本人が大事にしてきた季節感が反映されるようにし、世界に発信できるような場になれば」と熱い思いを語った。小池氏がよく口にする「江戸」を意識し、「江戸時代をほうふつさせるが、安っぽい江戸情緒のモノマネでなく、日本人の文化を提示できる物ができれば」とも語った。

 数人の委員からは、現在の築地市場を形成する象徴的な「アーチ状」の建造物を残すべきとの意見も出た。

 日本の観光文化に詳しい、デービッド・アトキンソン氏は「築地は世界有数の観光名所。全てピカピカにしてはいけない。コスプレにしてはいけない。本物の市場を残すこと、ビジネスとして生き生きとしている必要がある。建物だけ残しておくのではダメ」と指摘した。また、近隣に病院が多く、日本食が健康に良いという証明が出来るよう、食と医療ビジネスのコラボレーションも提案した。

 唯一、地元築地に関係する委員、築地本願寺代表役員の安永雄玄氏は「地元の声をしっかり聞くべきだ」と主張した。

 シャネル株式会社のリシャール・コラス社長は「新宿、六本木、汐留みたいな高層ビルはやめてほしい」と注文した上で「人が住める、低い建物で、段々畑のような緑の住むアパートがあって、築地の魚文化もあるもの」などと提案した。

 同会議は来年5月までに7回を予定。取りまとめた意見を元に、都が18年度内にコンセプトを発表する。