26日の大阪府岸和田市長選で再選されたばかりの信貴(しぎ)芳則市長(56)が、前回13年の市長選をめぐり、自民党の推薦を得る目的で、当時支持者だった同党関係者に現金200万円を渡していたことが27日、分かった。信貴氏が会見で認めた。支持者も会見し、衆院議員になる前だった自民党の神谷(かみたに)昇衆院議員(68=近畿比例)に200万円を渡したと証言、「裏金の認識だった」と暴露した。神谷氏は、地元市議への不透明な現金配布も発覚、今後責任を問われそうだ。

 信貴氏の市長再選から一夜明けた27日、信貴氏と、「渦中の人」につながる新たな政治とカネの問題が浮上した。

 信貴氏は会見で、200万円を当時の支持者だった自民党関係者に渡したことを認めた。「『あんじょうしてやる(うまくやってやる)』と、言われた。自民党の推薦を得るため、党に渡るお金だと認識していた」と話した。当時、信貴氏は市長選に出馬する前。市選挙管理委員会に提出した選挙運動費用収支報告書には、記載がない。「バタバタの中、記載を忘れていた。違法性の認識はない」と話したが、政治資金規正法や公選法に抵触する恐れがある。

 一方、信貴氏から200万円を受け取った当時の支持者で、自民党岸和田支部組織部長の会社役員、日田孝志氏(55)は会見し、生々しい「裏金受け渡し」の現場を証言した。日田氏によると13年10月、信貴氏から2回にわたり、封筒に入った100万円ずつを預かったと証言。市長選直前の13年10月4日と同30日、堺市内の料理店と大阪市内のウナギ店で神谷氏に会い、100万円ずつを渡したと、暴露した。

 14年衆院選で初当選した神谷氏は、衆院議員になる前で、自民党大阪府第18選挙区支部長だった。日田氏によると「(現金を)座布団の下に入れた。(神谷氏には)『一生懸命頑張らせてもらいます』と言われた」と、述べた。1回目は信貴氏に対する自民党の推薦依頼、2回目は他の候補が出馬を断念し、信貴氏への推薦が決まったことへのお礼との認識を示した。信貴氏は、実際に自民の推薦を得て同11月の市長選で初当選した。

 日田氏は、領収書を受け取っておらず「裏金という認識だった」と証言した。神谷氏の事務所は同日、「市長選に関わる資金提供に関して、ご指摘の事実はない」と書面で回答した。

 神谷氏をめぐっては、衆院解散前後の今年9月下旬、自身の選挙区内の市議14人に、現金計約210万円を配っていたことが発覚。14年の衆院選中にも市議側に10万円を渡していた。神谷氏は「法にのっとった行為」と違法性を否定するが、今回の市長選に絡んでも名前が浮上。相次ぐ「政治とカネ」の問題で、自民党内に激震が走っている。

 ◆信貴芳則(しぎ・よしのり)1961年(昭36)2月26日、大阪府岸和田市生まれ。同志社大卒業後、大阪府議秘書、調理師養成学校校長などを経て、03年から岸和田市議を3期務める。13年に岸和田市長に初当選。今月26日投開票の市長選で再選。著書に自身の闘病生活を記した「植物状態からの生還」。