「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、昨年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

 

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 <質問> 加藤先生、集中力を身に付ける方法を教えて下さい。20~30分くらいなら何とか机に向かって宿題をこなしたりはするのですが、そのうち飽きてほかのことを考えたり、勉強とは関係のないことに手を出してしまいます。好きな教科は社会くらいですが、先生の授業もあまり面白くありません。今の倍くらい集中して勉強できる方法はありますか?

(14歳 中2 神奈川県)

 

 <回答> 興味のある質問です。質問者は20分くらいなら集中できるそうですから、単純に倍の40分に増やせばいいのです。40分が集中力持続の目安と言われるからです。座禅なども40分と聞きました。

 集中力が続くというのは、興味や楽しみを持っているからこそ。社会科が好きと言うことですが、試験に出そうなところを一点集中で丸暗記するだけではなく、興味の対象を広げてみませんか。

 例えば、日本のお米の産地と生産量を勉強するとしましょう。地図を頭に描きながら、何県がどこにあり、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」などといった銘柄を思い浮かべるといいでしょう。この県ではほかにどんな特産品があるのかなど、複眼的に興味を広げます。また、世界にまで発展させれば、地球儀のようにさまざまな国の位置も入ってくるでしょう。同時に地球上でお米ができる気候や土地の特徴まで頭に入るかもしれません。

 歴史も同じ。何年に日本でどんな事件が起こったかを学びながら、同じように年代の世界の動きも勉強します。日本の現在の税制について学ぶのなら、過去には、いつの時代にどんな制度が確立されたのか調べていけば、知的興味が広がるでしょう。

 将棋の世界でも、集中力は40分と言われています。40分考えますと、大切な事のあらましが浮かびます。1~2時間の長考も当たり前ですが、それは40分考えて納得のいかない場合に改めて考えるからです。過去、1手指すのに4時間半も考えたことがありました。これは、勝負の分かれ目で私が1手指した後の変化をずっと読んでいたからです。

 私は将棋で長考するのはもちろんですが、大好きなクラシック音楽なら2時間でも聴けますよ。

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