「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、今年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

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 <質問> 私は親とあまり関わりたくありません。両親は離婚し、父親とは進学、母親とは就職で対立しました。ひどいときは「お前は言うことを聞かないヤツだ。もう知らん」と言われ、自分も「もういい」と感じるようになりました。最近の大学生の就活では、親から過干渉される人もいると聞き、自分の可能性をつぶすのなら関わりたくないと思っています。母と年賀状のやりとりはしましたが、心が許せずにいます。自分は異常な人間ですか?(34歳 会社員 福岡県)

 <回答> 難しいですね。こんなケースもあるのでしょう。ただ、自分の考えだけが正しいと思うのは、問題です。

 ドイツではある年齢まで、父親が進路には発言権を持っており、いろいろと意見を言うと聞きました。私の息子への子育て経験をお話ししますと、大学進学に関しては口を挟みました。理想だと思い、私が勧めたからです。フランス語学科で学んだのですが、就職は別でした。「フランス語のできる人間を欲しがっている会社がある」と先輩から言われて即決し、勤め始めました。もちろん、私が口を差し挟む余地などありません。まったく任せましたし、良い選択だと思いましたから。

 また、ある新聞社の部長さんは、過去に気まずいことがあった息子さんと、和睦の旅に出たそうです。それがきっかけになったかどうか分かりませんが、年賀状のやりとりをしているそうです。

 家族の交流はあった方がいいです。人へのうらみがあっても、「許す」という「寛容」さがあるのは大切なこと。断絶は残念だと思います。あなたから少しずつでもいいので、歩み寄ってみてはいかがでしょうか。いつの日か関係を修復してください。

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